障がい者の移動に関する研究
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263.知的・精神障がい者のための交通社会基盤整備に向けた課題に関する研究 高齢者、障がい者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することを目的とした「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(通称バリアフリー新法)」が平成18年に施行されて以降、身体障がいに限らず、知的障がい者や精神障がい者の移動のための社会基盤のあり方が問われるようになりつつある。今後、身体障がい者に対応するメニューを中心に整備された社会基盤整備の推進と同様に、知的障がい・精神障がい者の円滑な移動のために、どのような整備や支援体制を整えていけばよいかについて、具体的な方針を示していくことの重要性は高いと考えられる。 知的障がい・精神障がい者が自立した日常生活および社会生活を送るために、どのような社会基盤整備・支援が必要になってくるのかを把握するためには、まずは知的障がい者や精神障がい者の「交通行動特性」について適切に把握し、それに基づく政策展開を行っていくことが求められる。 (1)既往研究の整理 知的障がい者の行動や活動に関する既往研究として、鈴木ら2)は、知的障がい者の外出行動の基本的要件として「移動」に着目し、知的障がい者の外出行動の実態把握とこれを阻害する要因分析を行い、環境整備のための課題を明らかにしており、知的障がい者の移動に関する有意義な成果を提供している。しかし、自立した日常生活を送るための社会基盤整備に向けてはいまだ多くの研究蓄積が求められているといえる。 精神障がい者については、主に施設内の活動を捉えたものが見られる3)が、交通行動特性という側面からみた場合の詳細な実態については、ほとんど明らかにされているとはいえない。 このような中、著者らは先行研究1)で知的障がい・精神障がい者の交通行動特性について把握しており、図3-1のように障がい程度の判定が「中程度」であるとき、半数の被験者が外出時に介助が必要となっていない(すなわち単独行動が可能)ことを示している。知的障がい・精神障がい者の自立した日常生活及び社会生活を確保する単独行動の支援策を検討する上で、この違いがいかなる要因によって生じているのかを明らかにすることは重要であると考えた。 以上より、本研究は単独行動の可否からみた知的障がい・精神障がい者の交通行動特性を把握することで上記支援策検討のための基礎的知見を得ることを目的とする。 0%20%40%60%80%100%重度 (n=43)中度 (n=46)中度 (n=77)重度 (n=32)中度 (n=41)重度 (n=20)中度 (n=60)知的**精神視覚下肢必要性あり必要性なし 図3-1 外出時における介助者の必要性1)より抜粋

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