環境・経済・社会による都市構造評価の枠組みと豊田市を対象とした試算
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42.2 評価の枠組み 本研究において、持続可能性指標に関する既往の調査・研究を参考にして、TBLの3要素を表現する指標として、「都市域内に整備されているインフラの維持費用」、「都市域内におけるインフラ維持管理・住宅の更新・交通活動から発生する環境負荷」、「都市域内住民のQOL」、を用いる。これにより、先に述べた日本の多くの都市が直面している、自治体財政の逼迫や低炭素社会実現に向けたGHGs排出量削減やQOLの低下といった問題を総合的に評価することが可能となる。 また、国・地域・都市を対象とした持続可能性評価に関する既往研究は、対象地域全体を1つの評価単位とすることが一般的である。その場合、都市域の立地構造をどのように変化させていけば持続可能性が向上するかを検討することはできない。本研究ではその検討を可能とするために、実際の土地利用施策の検討に合わせた詳細地区単位で分析を行う。さらに、コーホートモデルを用いて住宅やインフラの存在量や更新必要量の将来推計を行うことにより、維持・更新を考慮した時系列での分析が可能となる。また、住宅の存在量は前述のコーホートモデルのように過去の統計データ等から残存率(住宅が整備されてから一定期間経過したときにその住宅が残っている確率)を設定して、将来における住宅立地の空間的分布を推計する以外にも、世帯や個人の居住地を選択する行動に着目して、ミクロレベルで世帯もしくは個人の居住地選択をモデル化して、それに基づき将来における住宅立地、世帯、個人の空間的分布を推計する方法も考えられる。本研究では、後者の居住地選択モデルを組み合わせた評価システムの構築を目指しており、居住地選択モデルを組み合わせることにより、都市構造に関連した施策の実施が、世帯や個人の居住地選択行動の変化を通じて、都市全体としてみたときの住宅、世帯、個人の空間的分布にどのように影響を与えるかを分析することが可能になる。これらにより、TBL各要素の空間分布やその時間的変化を把握することができ、地区間および世代間での格差の発生についても分析を行うことができる。 以上により、持続可能性の高い都市へ向けた政策デザインに資するデータの提供が可能となると考えられる。 (1)システムの全体構成 下図にシステムの全体構成を示す。各指標の推計は、既報6)~8)に従う。推計に必要な、将来インフラ量・住宅量・人口は、コーホート要因法によるモデルを用いて推計する。なお、ここでは簡便な方法として居住地選択モデルではなくコーホートモデルにより住宅量、人口を推計する仕組みをせつめいしているが、前述のように本研究では、居住地選択モデルを組み合わせた評価システムの構築を目指しており、居住地選択モデルを組み合わせることにより、都市構造に関連した施策の実施が、世帯や個人の居住地選択行動の変化を通じて、都市全体としてみたときの住宅、世帯、個人の空間的分布にどのように影響を与えるかを分析することが可能になる。また、分析の空間的な単位は、都市域を約500m四方に細分化した4次メッシュ(約0.263km2)単位や、地図で見る統計(統計GISプラザ、http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/toukeiChiri.do?method=init)から入手できる国勢調査(小地域集計)のように都市域を町丁目に細分化した空間単位を用いて推計を行うことが考えられる。これは、なるべく詳細な単位で各指標を推計し積み上げることで、都市空間構造との関係をミクロレベルで分析するためである。

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