環境・経済・社会による都市構造評価の枠組みと豊田市を対象とした試算
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3第2章 環境・経済・社会による都市構造評価の枠組み 本章では、環境・経済・社会の視点からの都市構造評価の必要性、評価の枠組みを示す。 2.1 環境・経済・社会による評価の必要性 21世紀、日本は人口減少・超高齢化・経済成熟期を迎える。このような状況では、従来型の「モータリゼーション依存型市街地拡大戦略」を継続していたのでは、人口や経済規模に対して市街地供給が過剰となる。その結果、多くの資源を非効率に消費することになり、多額の市街地維持費用を必要とするとともに、多くの環境負荷を発生させる都市構造になってしまうことが懸念される。さらに、散漫な都市構造に起因する諸問題は様々な経路を通じて最終的に住民の生活環境質(Quality Of Life:QOL)を損なうことにもつながる。 これらの問題は、都市の「持続可能性」を低下させる事象として捉えることができる。持続可能性とは1987年に「環境と世界に関する世界委員会(ブルトラント委員会)」1) が作成した報告書において取り上げられた「持続可能な発展(Sustainable Development:SD)」という概念に基づくものである。そこでは、「持続可能な発展とは、将来の世代が自らの欲求を充てんする能力を損なうことなく、今日の世代の欲求を満たすような発展」と定義されている。しかし、この定義は抽象的なものにとどまっている。 持続可能性を具体的に評価するアプローチの1つに「トリプル・ボトム・ライン」(Triple Bottom Line:TBL)2) がある。TBLは、1997年にイギリスのサスティナビリティ社のジョン・エルキントン氏によって提唱された概念で、企業活動を「経済」だけではなく、「環境」と「社会」を含めた3つの視点から評価するというものである。これは企業の社会的責任(CSR:Corporative Social Responsibility)における基本的な概念となり、その後EUも持続可能性の3要素として取り入れた。 これは決して企業活動にとどまらない評価フレームであり、また、国連持続可能な開発委員会(Secretariat of the United Nations Commission on Sustainable Development: UNCSD)3) や国連開発グループ(United Nations Development Group : UNDG)4) が発表している持続可能性の評価指標をはじめとして、持続可能性評価に関連した多くの調査・研究5) がTBLの3つの要素に着目した整理を行っている。本研究が対象とする都市に当てはめることもできる。その場合、例えば「経済」は自治体の経済・財政状況、「環境」は都市活動に伴う環境負荷、「社会」は都市居住者のQOL水準及び個人格差、に対応付けることができる。 次節では、都市域の持続可能性をTBLの観点から評価するシステムを示す。具体的には、1)TBLの各構成要素を表現する指標を定義し、それを小地区単位かつ時系列で推計するモデルを構築し、2)推計された3つの指標に基づき都市域の持続可能性を検討する方法を示す。
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