プローブデータを用いた交通安全評価に関する研究
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3トリガーが発生した前後の一定時間のデータのみを記録しているイベント記録型に分類できる。イベント記録型では、3軸方向の加速度センターを用いて、いずれか1方向で0.3G以上または-0.3G以下の加速度となった時点をトリガーとしていることが多いようである。収集できるデータ項目は、車載機に搭載しているGPS、加速度センサー等のセンサーの種類によって異なるが、主に、日時、緯度経度、走行速度、方位、加速度(前後加速度、左右加速度、上下加速度)等が収集されている。データ測定間隔は、短いもので0.1秒、長いもので2秒となっている。 危険箇所の判定基準としては、加速度の値が用いられている。概ね、0.3G以上または-0.3G以下の加速度が基準とされている。これらの値を参考に、本研究で用いる車載機の仕様を考慮して判定基準の検討が必要であると考えられる。また、個人毎に加速度の出現範囲や頻度が異なることに注目した文献もあることから、個人の特性を考慮した判定基準の検討も必要であると考えられる。実事故地点との関連性については、判定基準を用いて抽出した地点に、事故多発地点が含まれるという報告がある一方で、急ブレーキデータから交通事故多発危険交差点を抽出することは困難であるといった報告や事故多発地点以外の地点も多く抽出されるという課題があるということが報告されている。 映像解析を加えたヒヤリハット地点の高効率抽出アルゴリズムとして、久保ら6)は、映像も記録可能なイベント記録型のドライブレコーダを用いて、東京都内のタクシー車両約50台によるデータ1,567件(イベント)を収集し、映像を目視によって9つの類型(事故、ヒヤリハット、客拾い、急ブレーキ、急加速、縁石、縁石車止め、バウンド、ノイズ)に分類した。さらに、加速度センサーの3軸の波形を観察し、各軸の加速度の標準偏差などを指標として、イベントの類型を自動で分類できるアルゴリズムを構築した。分類結果を的中率、検出率を用いて評価したところ、どちらも90%を超えており、これまでに全く類を見ない高率な自動分類手法であると報告している。 2.2. エコドライブと交通安全 エコドライブの実践と事故率低減、及び、事故率低減の要因に関する情報収集を行った。以下に、レビューをまとめる。 間地ら7)は、トラックドライバーを対象に、「ゆっくりとした発進と停止」に特化したエコドライブ教育とその実践が燃費改善と交通事故低減に及ぼす効果を分析・検討した。エコドライブの教育と励行の前後それぞれ1年間の計2年間にわたって、トラック事業者17社1020台の燃費を管理する走行管理表(車載機は使用していない)、トラック事業者11社1,310台の交通事故報告書を調査した。平均燃費は、大型車(最大積載量8トン以上)で平均6.6%、中小型車(最大積載量2トン以上8トン未満)で平均9.4%改善し、交通事故の発生数は49%減少したとしている。事業者別の走行距離当たりの交通事故発生件数は36%に低下し、64%の事故率削減効果が得られたと報告している(表 2)。また、エコドライブ教育の実施後、ドライバーから「運転に余裕が生まれた」「急ぐことをしなくなったため、結果的に安全確認がしっかりできるようになった」とのコメントが数多く寄せられており、「ゆっくりとした発進と停止」の実践が安全な運転に繋がっているものと推察されると考察し、一般ドライバーへの展開を今後の課題としている。なお、本論文は、査読付き論文ではなく資料として論文集に掲載されている。

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