報告書 地方都市における企業TDMMMに関する研究
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- 26 - 2-4 通勤手当に関する既往文献のレビュー 企業におけるTDMやMMの最も大きな対象は、従業員の通勤(及び帰宅)トリップ(以降では、通勤行動とする)である。通勤行動に影響すると考えられる要因としては、所要時間、混雑状況、プライベート空間の有無、出発時間選択の自由さ、経路選択の自由さ、通勤時間の活用方法など、様々なものが考えられる。一方、我が国の多くの企業においては、通勤手当が存在していることから、従業員が通勤方法を選択する際(さらには居住地選択時)に、通勤にかかる費用が考慮されにくい状況にあると考えられる。例えば、大都市における鉄道通勤混雑に着目すると、通勤手当の存在により利用者の通勤費の負担額が鉄道車内混雑の外部不経済と比較して低すぎることが、通勤混雑の一員であるという指摘がある1)。 通勤時の混雑解消や、交通手段転換を考えるにあたり、従業者の通勤行動に大きな影響を及ぼしていると考えられる通勤手当についての知見を深めておく必要がある。 そこでここでは、通勤手当に関する既往文献をレビューし、主だった研究成果や論説等を収集した。その結果、20編の文献を収集することができたが、それらの中には、例えば交通行動分析モデルの一変数としてのみ通勤手当が扱われているもの2)も含まれている。そうした文献を除き、特に企業TDMやMMに関係が深いと考えられる6編の文献についてその概要を整理する。 (1)我が国の通勤手当について3) 笹島1)は、我が国の賃金制度における諸手当の実態と長期的動向を整理している。それによると、いくつかの特徴として、①今日、様々な手当が存在すること、②採用率の高いのは、通勤手当(91.3%、2004年の値。以下同じ)、家族手当(71.1%)、役付手当(83.8%)、技能・技術手当(49.8%)、精皆勤手当・出勤手当(37.9%)であること、③採用率は、技能・技術手当で高まる傾向がみられ、精皆勤手当・出勤手当は低下する傾向がみられること、などを指摘している。なお採用率とは、各手当を採用している企業の全企業に占める割合である。(資料出所:労働省『賃金労働時間制度等総合調査』、厚生労働省『就労条件総合調査』) 以上は1974年以降の動向を見たものであるが、それ以前の状況を見ると、1950年から1969年にかけて、特に通勤手当は19.3%から81.7%に大きく変動している。通勤手当は、近年になって採用されるようになった手当であるといえる。(資料出所:1950年は労働省『給与構成調査』、1969年は労働省『賃金労働時間制度等総合調査』) また、所定内賃金に占める通勤手当の割合をみると、諸手当は所定内賃金の1割程を占めている。その中で、通勤手当は所定内賃金の1.3%(2007年)を占めている。(資料出所:中央労働委員会『賃金事情調査』) 一方、我が国の諸手当制度の特徴を見るため、アメリカの一般的な企業における諸手当制度について概観している。その中で、アメリカの一般的な企業では諸手当の多くは、基本給(base pay)または賃金率(wage rate)の中に組み込まれており、通勤手当は存在しない。 (2)通勤手当撤廃による影響に関する実証研究について4) 湯浅、円山、原田2)は、通勤手当の撤廃による鉄道通勤混雑の緩和効果について、鉄道通勤者の居住地選択モデルを構築し、通勤手当を撤廃した場合の居住地選択状況を試算している。 居住地選択行動に影響を及ぼす要因として、a)勤務地へのアクセス利便性、b)居住費用、c)住宅供給

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