報告書 速度マネジメンの実現に向けた研究
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59図するものである。 この時速20マイル規制は、標識ポールに区間の開始・終了標識と反復標識の組み合わせによって実施された。合わせて、この開始・終了標識に隣接した街路入り口部の車道に円形の速度規制表示を施した。見とおしが限られている場所では、反復標識の近くにも標示した。 設置のしやすさの点から、市を6地区(都心東部、都心西部、南東部、南西部、北東部、北西部)に分けて進めた。これは、ポーツマス市の総道路延長の94%(総延長438kmの内、410kmを対象)にあたる。速度規制標識と標示を設置した道路のほとんどでは、設置前の平均速度は時速24マイル以下であった。事業導入前の速度が比較的低いのは車道が狭かったり、車道の有効幅員をさらに狭める路上駐車があったためである。時速20マイル規制の標識はまた、ポーツマス市の標識による速度規制で不整合を避ける目的で、平均速度が時速24マイル以上の道路区間についても設置した。この(規制)事業の目的のひとつは(self-enforcing)“自然に達成、自ら抑制される(警察が特に取締る必要はない)”ことであり、低速度での運転を支援し、攻撃的な運転マナーを抑えることも一部目的としている。 この事業を実施した後、平均速度が時速20マイル以下となった地点数は、全体としては増加した。多くの地点は、この事例の実施前に既に平均速度が時速20マイルよりも低かった。事前には比較的高い平均速度を示した地点では平均速度が大きく減少した。事業実施前の平均速度が時速24マイル以上の地点全体では平均速度は時速6.3マイル低下した。全道路についての平均速度の低下は平均で1.3マイルであった。 自動車交通量と経路に与えたこの事業の影響についてコメントするデータは不足している。この事業の実施前の平均速度は多くの道路でかなり低かったことから、それらの変化はごくわずかにとどまると推定される。 事業の実施前3年間と実施後2年間を比較すると、報告があった交通事故死傷者数は年間183件から142件と22%減少した。この同じ期間に全国では事故死傷者数が減少しており、(ポーツマス市と)同様な地域では約14%の減少であった。 道路利用者についてのグループ別(例えば、歩行者と自動車運転・同乗者別)、あるいは事故原因別の死傷者数の変化には、表面上大きな齟齬は見られない。年間あたりの死者・負傷者数は19人から20人に増加した。利用者数や原因別の死者・重傷者事故件数や死傷者数の総数は比較的少ないため、これらの数値から本事業のインパクトを推測することはほぼ不可能である。 定性的な調査からは、本事業を住民は一般に支持しているが、この時速20マイル規制の取締りを強化すべきとの意見が多いことが分かった。また、回答者の大多数はこの事業の導入による影響は自分が選択した交通手段についての移動量にはほとんどなかったとしている。乗用車交通量レベルは(事前事後で)同様であるが、歩行者と自転車の移動量そして公共交通の利用者レベルは回答者の内少数ではあるが増加したとしている。 結論として、初期の(暫定的)数値ではあるが、この時速20マイル規制事業の実施は道路死傷者数の削減になっていることを示唆している。適用当初2年間について、この事業

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