報告書 速度マネジメンの実現に向けた研究
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11章 はじめに (1)背景と目的 ブキャナン・レポートで提示された道路の段階構成、居住環境地域などの考え方は、世界中の都市・交通計画に大きな影響を与えた。わが国においても、計画を立てる際の思想的背景となっている。しかし、わが国の都市の現実を見ると、計画論と現実との間に大きな乖離が見られる。これにより安全性や生活環境に大きな問題を抱えている地区が無数にある。この一因として、道路の“計画上の段階構成”が“速度の段階構成”と乖離している点が挙げられる。本研究は、“計画上の段階構成”と“速度の段階構成”が整合した計画論、ITSなど新たな技術を用いた“21世紀の日本型ブキャナン・レポート概念の開発提案”を目的としている。 今年度は、周辺土地利用など空間の使われ方を踏まえた速度マネジメントの考え方を整理し、さらに、昨年度からの継続研究である速度マネジメントの受容性や実行性担保、制度・費用面の課題などに関する調査研究を進める。 (2)研究方法 1)速度マネジメントの概念と具体的な考え方 昨年度は、道路構造や機能などを考慮した面的速度マネジメントの考え方を示してきた。しかしながら、空間(エリア)的配慮の観点からは、市街地と市街地以外といったマクロ的なものに留まっている。より適正な形での運用や、実現可能性など実務的観点を踏まえても、その道路空間の周辺環境や道路自体の使われ方を考慮したきめ細やかな速度マネジメントの考え方が望まれるといえる。ここでは、データの一般的な入手可能性などに留意しつつ、速度マネジメントの具体的な考え方を整理する。 2)速度マネジメントの受容性に関する事例分析 速度マネジメントをより円滑に進めていくにあたっては、様々な関係機関(住民、運転者、道路管理者、交通管理者)において、その受入時にどのような課題が生じるのかを整理しておくことが有効であると考えられる。そこで、平成21年度に整備計画が策定された豊田市のあんしん歩行エリアにおける住民参加型対策立案の調査・モニタリングをはじめ、他地域の先進事例の視察を通じて、行政、警察さらには住民・ドライバーといった多角的な視点から速度マネジメントの受容のための諸課題を整理する。 3)速度マネジメントの実行性担保のための事例調査 計画論と現実の乖離を低減させていくためにも、設定された速度マネジメントの計画論だけでなく、その実効性を担保するための方法論は極めて重要である。その視点としては、道路の空間構成および取り締まりなどの方法論による対応が考えられる。国内外の「取り締まりにおける現状(方法論、考え方等)」について収集・整理することで、速度マネジメントの実行性を担保する空間構成のあり方について提言を行う。

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