報告書 車両挙動および運転者意識分析に基づく公用車の安全走行に関する研究〜ごみ収集車に着目して〜
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11.背景と目的 生活道路の安全性を考慮するうえで、特に大型車両の流入抑制は重要な視点であるが、車両によってはその特性上、定期的・不定期的に生活道路に侵入せざるを得ない状況が生じている。その典型としてごみ収集車がある。我が国で主にごみ収集車によって回収される家庭および事業所から排出される一般ごみの量は、近年減少傾向にあるものの未だ5,200万トン(平成21年度環境白書)にも及び、ごみ収集行動に大きな影響を与えていると考えられる。しかし依然地域によってはごみ収集車がごみを収集するために1日に幾度となく住民の生活空間が集合する地域とごみ処理施設間を往復する交通を行っている。超高齢化社会の到来を迎え、歩行者などが多い生活空間の交通安全を高めていくことが今後さらに重要視される中で*1、そのような空間を巡回しなければならない車両においては、走行のあり方を考慮した対策が求められるべきと考えられる。そしてそのためには、そのような車両が、特に安全性の観点から生活空間を構成する生活道路においてどのような走行特性を行っているのかを把握することが必要である。 これまで効率的回収のためのルート設定についての研究は数多くみられるが、その走行安全性をいかに担保していくべきかという視点からの研究はほとんどみられない。昨年度、豊田市のごみ収集車の一般的な走行挙動をドライブレコーダデータの解析を通して整理した。今年度は、車両の走行安全性を考慮したごみ収集計画のために、どのような環境において走行挙動を変化させる要因につながるのか、運転者はどのような意識で運転しているのかなど、運転者の安全走行を支援するための基礎的知見を得ることを目的とする。 2.既往調査・研究からみた本研究の位置づけ ごみ収集に関する既往研究を概観すると、ごみの収集運搬費がごみ処理費においてかなりの費用を占めることもあり、これまで効率的にごみを収集するための研究が多く、ルートなどの最適運行計画を試みているもの例えば1)2)や、処理施設などの最適配置を試みているもの例えば3)4)などがある。他方、収集サービスについて住民意識から改善しようと試みている研究5)や、ごみの積載量と収集速度の関係を捉えた研究6)なども散見されるが、特に、前者の運行の効率化は走行距離の削減につながるため、交通安全上も有効な手法と考えられる。しかし家庭からのごみの排出が無くならない限り、ごみの収集運搬のために生活道路をごみ収集車が走行しなければならず、本研究のようなごみ収集車の走行安全性に着眼することは少なからず重要性があると考えられる。

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