報告書 自治体バスの運賃以外の収入に関する調査研究
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13(4) 収支状況別からみた自治体バスの傾向 上述のように全体として自治体バスの収支傾向は非常に厳しい状況下に置かれている一方で,図-9に示されるように,自治体によっては比較的良好である場合もみられる.このような収支状況の違いによって,自治体バスの運行実態,それを踏まえた財源実態にどのような特徴があるのかを示していく. 分析を実施するに当たり以下の方法で収支状況を分類した.サンプル数の配分量を考慮し,収支率の四分位数を求め,1/4分位数未満を収支率が低い自治体(以下,「低」とする),1/4分位数以上,2/4分位数未満を収支率が中程度に低い自治体(以下,「中低」とする),2/4分位数以上,3/4分位数未満を収支率が中程度に高い自治体(以下,「中高」とする),3/4分位数以上を収支率が高い自治体(以下,「高」とする)を峻別した.表-6にそれぞれの具体的収支率の値を示す.以下,この分類に従い傾向を整理する. 表-6 収支率による自治体の分類結果 分類 収支率 該当自治体数 低 0.065未満 157 中低 0.065以上,0.219未満 152 中高 0.219以上,0.387未満 153 高 0.387以上 153 a) 収支状況別自治体バスの運行路線とその目的 収支状況からみた自治体バスの運行財源実態把握するにあたって,まずは収支分類別の自治体バスの運行路線とその目的にどのような傾向にあるのかを整理する. 図-10収支状況別自治体バスの路線数を示している.収支率が「低」の自治体の運行本数が最も少ない一方で,収支率が「中低」の運行本数が最も多い.これは収支率が「低」の自治体は収支状況の悪さから運行本数を多くできない可能性が,収支率が「中低」ところは,運行本数が多いため,収支状況が悪化している可能性が示唆される. 次に収支状況別の運行目的の傾向をみる.図-11は収支状況別で各運行目的の路線を持つ自治体の割合を示している.収支率が「低」の自治体はすべての目的で路線を持つ割合が小さい傾向が確認できる.また,全体的に収支率が「中低」もしくは「中高」では各目的を持っている割合が大きい傾向にある.図-12は重要度の回答内容を得点化(非常に重要=4点~重要でない=1点)し,収支状況別の平均得点を図示している.クラスカル・ウォリス検定を行ったところ,「観光振興」(1%水準),「高齢者等交通弱者の対応」(5%水準)の運行目的において収支状況別で有意差があったものの,それ以外の運行目的では有意差があるとはいえなかった.有意差のあった「観光振興」および「高齢者等交通弱者の対応」目的は,いずれも特に収支率が「高」の自治体で重要度得点が高い傾向がみられるという特徴がある.
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