報告書 行動実態データに基づく障がい者のアクセシビリティ向上方策に関する研究
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2 第2章 障がい者の移動ニーズとアクセシビリティに関する詳細分析 ①ニーズと実態のギャップが大きい移動目的の果たす意義の整理と明確化 1)ニーズの概念整理 ニーズの概念は諸分野において様々な捉え方があり、多くの定義が存在する。既往の研究においても、ニーズという言葉は、明確な定義が示されず使用されることも多い。ここでは、福祉分野の研究でBradshaw1)によって示されているニーズの分類を参照しつつ(表2-1)、本研究におけるニーズを位置づける。表2-1で示したニーズの分類の関係を図2-1に示す。Felt need は、wantsなどを含む対象者が希望しているニーズであり、実際に実行に移されたものが、Expressed need となる。また、対象者自身が現時点で明確に認識していなくとも潜在的に存在するニーズUnfelt needも存在する。一方でComparative needは、同一の特性(地域特性、年齢層など)を持つ人々の一部が実際にサービスを受容している場合に、そのグループには同等のニーズが存在するという考え方で示されるものである。Normative need は、専門家や行政官などにより必要なものであるとして規定されたものである。以上を踏まえると本研究でのNormative needの定義の範囲は、保障されるべき権利の具体的対象となる「日常生活の上で最低限必要な移動」とする。それぞれのニーズは、それぞれを部分的にカバーしながら存在しているものと考えられる。これによりNormative need を本研究で対象とするニーズとすることが適当であると判断した。 表2-1 ニーズの分類 Felt need (対象者自身が感じているニーズ) 個々に感得されたニーズであり、欲求(want)と同等のものである。 Expressed need (表現されたニーズ) Felt needを他人にわかるように、実際に表明したもの 行動にうつされたニーズ Comparative need (比較ニーズ) サービスを受容している人々の特性を研究することによって測定されるようなニーズであり、仮に(サービスを受容している人々と)同一の特性を持つ人びとがサービスを受けていなければ、その人びとはニーズをもつ人びとである。 Normative need (規範的ニーズ) 専門家ないし行政官ないし社会科学者によって、所与の状況においてニーズと規定されたもの。 生活上最低限必要な移動として保証されるべきもの。

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