報告書 交通イノベーション・産業イノベーションの実現化に向けての基礎調査
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第Ⅰ編 はじめに 1第1章 はじめに 1-1 研究の背景 高齢者等の移動手段確保、市街地活性化、安全な道路交通社会の実現、地球温暖化やエネルギー不足への対応など、現代の都市交通は多くの課題を抱えている。 これまで、特に高齢者や障がい者の、短距離の移動手段の確保に貢献するため、電動車いすやシニアカーといった乗り物が実用化されている。また、近年、コンパクトかつ省エネルギーや交通安全に配慮した、いわゆる「パーソナルモビリティ(以下、PMVとする)」の開発が様々なメーカーで行われ、その一部が商業施設等において活躍している。 しかしながら、現行の法制度上、公道での使用が認められていないために広く社会で実用化されるには至っていない。また、PMVが安全かつ円滑に走行するためには、都市施設(インフラ)としてどのような受け皿が必要になるかについても、明らかにする必要がある。 そうした中で、国土交通省は「平成22年度環境対応車を活用したまちづくりに関する実証実験」1)2)を実施するにあたり、協働で実証実験を行う地域のひとつに、愛知県豊田市が選定した。豊田市は、超小型モビリティの利活用に関する実証実験の対象地域として選定され、一人乗り原動機付自転車(いわゆるミニカー)や本研究で対象とするPMV等を活用した実証実験を行うこととなった。PMVの実用化に向けた動きが進み始めている状況にある。 PMVが実用化され、社会に普及・浸透すれば、これまでのような自動車に依存した交通に大きな変化をもたらす可能性がある。また、PMVだけでなく産業用ロボットや介護ロボットなども含めた様々な分野のロボットの市場予測として、2025年に6.2兆円との試算3)がなされており、産業にも大きな変化をもたらす可能性がある。 このようなPMVは、冒頭に述べたような都市交通における様々な課題の解決の一助となることが考えられることから、法制度上の課題を解決し、都市施設の受け皿を整えることで、公道でも使用できるようにしていくことが望ましいと考えられる。 なお、本研究の題目にもなっている「イノベーション」について、2007年6月に閣議決定された「長期戦略指針『イノベーション25』」4)によると、次のように記されている。本研究においても、この内容を参考にしつつ研究を推進する。 資料:参考文献3) イノベーションとは、技術の革新にとどまらず、これまでとは全く違った新たな考え方、仕組みを取り入れて、新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことである。このためには、従来の発想、仕組みの延長線上での取組では不十分であるとともに、基盤となる人の能力が最大限に発揮できる環境づくりが最も大切であると言っても過言ではない。そして、政府の取組のみならず、民間部門の取組、さらには、国民一人ひとりの価値観の大転換も必要となる。

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