報告書 交通イノベーション・産業イノベーションの実現化に向けての基礎調査
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第Ⅲ編 パーソナルモビリティに対する市民の意識に関する調査 第6章 立ち乗り型PMVの受容性に関する研究 107 ②受容性の意識構造分析結果 構築された意識構造分析モデルの推定結果を図-2に示す。単方向の各パスに示されている数値は標準化されたパス係数であり、また、各内生変数に示されているのは重相関係数の平方、パス図の誤差変数間のパスに示されているのは相関係数である(23)。これらのパス係数のすべてが99%有意水準で統計的に有意である。 まず、適合度のカイ二乗検定及び適合度指標TLIとRMSEAにより得られた意識構造モデルの信頼性を評価する。このモデルは、自由度が28、カイ二乗値が32.31で、その確率が0.26に基づき、95%有意水準でモデル適合性に関する仮説は棄却されない。また、このモデルの適合度指標TLIは0.98であり、RMSEAは0.04である。 Hu and Bentlerの提唱(24)により、TLIが0.95以上かつRMSEAが0.06 以下の場合は高い適合度を示す。従って、構築された立ち乗り型PMVの受容性における意識構造によく適合したモデルが得られたと言える。 次に、具体的に見れば、「車体」から「建物内利用態度」と「街中利用態度」への標準化パス係数の何れも0.48であり、「車体」が「建物内利用態度」にも「街中利用態度」にも影響していることが分かる。また、「建物内利用態度」から「街中利用態度」への標準化パス係数は0.52であり、「建物内利用態度」から「街中利用態度」に影響していることが分かる。そして、「車体」が「建物内利用態度」の分散の23%を占めているため、信頼性が少なくとも0.23であると推定される。「車体」と「建物内利用態度」が「街中利用態度」の分散の75%を占めているため、信頼性が少なくとも0.75であると推定される。 「車体」の各観測変数への標準化パス係数はすべて正であり、環境技術への標準化パス係数が0.68と最も大きく、環境技術が他の観測変数よりも「車体」でより多く説明される。また、「建物内利用態度」は便利性への標準化パス係数が0.8と最も大きく、便利性が他の観測変数よりも「建物内利用態度」でより多く説明される。そして、「街中利用態度」は便利性への標準化パス係数が0.72と最も大きく、便利性が他の観測変数よりも「街中利用態度」でより多く説明される。 以上のことから、立ち乗り型PMVに対する受容性が、「車体」、「建物内での利用」、「街中での利用」の三つの態度に分けられること(即ち、仮説②)は、統計学上に適合性があると言える。また、車体に対する肯定的態度が高まると、建物内での利用に対する肯定的態度も街中での利用に対する肯定的態度も高まる。そして、建物内での利用に対する肯定的態度が高まると、街中での利用に対する肯定的態度が高まる。この結果は統計的にこのような心理的プロセスが存在すると証明した。さらに、これらの態度が様々な信念によって決められること(即ち、仮説③)も、統計学上有意であると明らかになった。

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