報告書 交通イノベーション・産業イノベーションの実現化に向けての基礎調査
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第Ⅲ編 パーソナルモビリティに対する市民の意識に関する調査 第6章 立ち乗り型PMVの受容性に関する研究 104従って、立ち乗り型PMVの利用場面については、見学者群も試乗者群も、「観光地での周遊」、「中心市街地内での短距離移動」及び「建物内の移動」について希望される割合が高く、同じような傾向がある。 他の活用方法について、見学者群の場合は「公共交通(電車・バス)で出掛けた先の駅・バス停から目的地までの移動手段」と「都市と周辺での業務交通」を挙げる割合が比較的に多く、それぞれ約11%と7%である。一方、試乗者群の場合は、この傾向が見られない。試乗体験に基づき、上記の二つの場面においては、立ち乗り型PMVの利用意欲が低いと分かった。 利用場面を増やすために不足していると思うことについて、試乗者群に対して優先順位の高い順に三点選んでいただく方法で質問した。優先順位1位に占める割合が多い項目としては、「専用の走行空間」(1位の中で約22%)、「荷物を載せるスペース」(同約20%)及び「広い歩道」(同約19%)があり、走行空間に関する意見と車両の機能性に関する意見の占める割合が高い。優先順位2位以下になると、ほぼ同様の傾向がみられるが、「操作性」及び「速度」を挙げる割合が増える傾向にある。 利用する場面の仕組みとして望ましいと思われるものについて、試乗者群を対象に質問した。その中、「購入による個人所有」を挙げる割合が約37%で最も多い。次いで「カーシェアリングのような共同利用システム(15分単位程度の短時間からの利用)」は19%程度の人が挙げ、また、「リース契約による専属的利用」については約18%の人が挙げている。 購入意欲については、見学者群が4割にとどまっている一方、試乗者群が9割に達した。よって、試乗体験は人々の立ち乗り型PMVに対する購入意欲を向上させる。 (3)受容性変動の分析 6-2節では、立ち乗り型PMVに対する受容性について、「車体」、「建物内での利用」及び「街中での利用」に対する三つの態度で表現できるとの仮説②を示した。前節に述べた立ち乗り型PMVに対する認知及び利用意向の実体把握からみれば、当該仮説は実践上の合理性があると言える。 また、上記の三つの態度がそれぞれの信念により決められると仮説③を出したため、本節では、これらの信念を5段階のリッカート尺度(Likert scale(22)、即ち、最高点+2から最低点-2までの1点刻み5段階評価)で数値化して測定し、試乗体験がもたらす立ち乗り型PMVに対する受容性の変化等を分析する。表-2に群毎各信念の平均値、標準偏差及び対応のあるt検定結果を示す. まず、「車体」に対する態度については、デザイン、サイズ、1人乗りであること及び環境技術の四つの信念において、見学者群も試乗者群も比較的に高い肯定的な評価を下した。その中に、前二者の場合において、この二つの群に統計的に有意な差が見られ、即ち、試乗体験が人々のデザイン及びサイズに対する評価を向上させる。 次に、「建物内での利用」に対する態度については、便利性と調和感の二つの信念に対し、見学者群も試乗者群も肯定的な評価を出し、また安全性の信念において、中立的な評価を取った。その中に、調和感の信念において、二つの群には統計的な差が見られ。即ち、試乗体験が人々のその調和感に対する評価を向上させる。 さらに、「街中での利用」に対する態度については、便利性の信念に対し、見学者群も試乗者群も肯定的に評価し、その一方、安全性に対し、二つの群とも否定的な評価を下したが、試乗者群の絶対値がより小さくなっており、試乗によって否定的評価を低減される効果もある。さらに、調和感の信念に対し、見学者群が否定的な評価を出した一方、試乗者群が肯定的な態度を表した。その中に、便利性と調和感に対する二つの群の評価には統計的に有意な差が見られ、即ち、試乗体験が人々のその便利性と調和感に対する評価を向上させ、特に、試乗体験によって、調和感に対する評価は否定的ものから肯定的な方に変わった。
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