報告書 交通イノベーション・産業イノベーションの実現化に向けての基礎調査
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第Ⅲ編 パーソナルモビリティに対する市民の意識に関する調査 第6章 立ち乗り型PMVの受容性に関する研究 101第6章 立ち乗り型PMVの受容性に関する研究(Wingle試乗者アンケート結果より) 6-1 はじめに 世界の豊かな先進国における生活スタイルは、もはや持続可能なものではなくなっている(1)。少子高齢化に起因する高齢者等の移動手段確保問題、都市の分散化に起因する市街地のスプロール問題が日増しに深刻化しつつある。また、発展途上国の多くは都市化とモータリゼーションの進展につれ、急速な経済や社会の成長を遂げてきたその一方、膨大なエネルギー消費と大量の汚染物の排出も一層目立つようになり、資源価格の高騰や環境の悪化をより招きやすい構造となってきている(2)。 上記に挙げた、高齢者等の移動手段確保、市街地活性化、地球温暖化及びエネルギー不足との課題への対応に向けて、新しい移動手段となる個人的な乗り物、即ち、パーソナル・モビリティ・ビークル(以下は「PMV」と称する)が提案されてきた(3) -(6)。しかしながら、現在のわが国では、PMVが法律上公道での利用できないものであり、その推進にあたっては、様々な課題を解決しなければならない。その中には、PMVに対する市民の意見を収集し、実社会への導入に向けた検討を進める際の基礎的な知見を蓄積しておく必要があると指摘されている(7)。 よって、本研究では、立ち乗り型PMVに着目し、それに対する認知度と評価及び試乗体験がもたらす受容性の変化等を検討する。また、その受容性における意識構造分析を行う。具体的には、まず「立ち乗り型PMV」と「受容性」に関する既存研究をそれぞれレビューした後に、本研究に係る受容性の概念を明らかにしその仮説を提示する。次に、豊田市で実施した調査によるデータを用いて、立ち乗り型PMVに対する認知度と利用意向の実態を把握する。また、その結果に基づき、試乗体験が立ち乗り型PMVへの受容性にもたらす影響を検証するため、対応のあるt検定を用いて、有意性の検定を試みる。さらに、その受容性における意識構造を提案し、共分散構造分析でその評価を行う。そして、これらより得られた知見及び今後の課題をまとめる。 6-2 既存研究のレビューと本研究の位置付け 立ち乗り型PMVに関する既存研究においては、走行安定性といった車両の性能や構造について機械工学、自動車工学的角度から取り組んでいるものが多く(8) (9)、運転時の機械故障及び異常な動作に係る診断を考察しているものも見受けられる(10)。また、実社会に本格導入するにあたり、それによる交通事故の身体への損害を検討したもの(11)、障害者の自立及び社会活動への参加を支援する移動手段の有効性を検証したものがある(12)。そして、走行実験調査に基づいて回避行動特性を把握する研究も(13)、歩行空間における安全性と安心感を評価する研究も行われている(14)。ただ、いずれも立ち乗り型PMVの受容性を評価するには至っていない。 受容性に関する既存研究において、受容性(acceptability)とは、ある特定の対象に対する態度の表現であると定義されている(15) (16)。また、態度(attitude)が心理的傾向であり、その心理的傾向の表現方法とは、多少程度の好き・嫌いを持ってある特定の対象(例えば、立ち乗り型PMV)を評価することである(17) (18)。そして、態度は信念によって決められる。信念(belief)とは、その行動(例えば、立ち乗り型PMVの利用)がどういった結果を生み出させるかという事前の予期である(18) (19)。Osgoodらの指摘(20)により、信念は中立もしくはゼロとの参考数値のある両極性尺度を数値化して表すことができ、その数値が態度の方向性及び程度を表現する。 従って、本研究の受容性とは、立ち乗り型PMVに対する態度の表現である。また、既存研究(8) -(20)により、次のように三つの仮説を提示する。a)仮説①とは、試乗体験が受容性の向上に結び付けられる。b)仮説②とは、立ち乗り型PMVに対する態度が三つに分けられ、それぞれ「車体」、「建物内での利用」及び「街中での利用」に対するものとなる。c)仮説③とは、上記の三つの態度がそれぞれ下記に掲げる信念で決められ、具体的には「車体」に対する態度がデザイン、サイズ、1人乗りであること及び環境技
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