報告書 サービス享受度からみた住民の地域公共交通の評価構造に関する研究~個人の背景との比較を通じて~
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9(4)公共交通のサービス享受度と評価意識の関係 公共交通のサービス享受度には様々なものがあると考えられるが、本研究ではより根源的な視点にたち、提供されるサービスがまずは利用可能かどうかという「サービスへの可達性」の視点と、提供されたサービスがどの程度利用者の生活の中で利便性があるかどうかという「サービスの相対利便性」という2視点から考えることとする。 前者については、住民の自宅から鉄道駅、基幹バス停、地域バス停との近接性という視点から、後者については、公共交通による地域間移動所要時間が他の利便性の高い交通手段(ここでは自動車を想定する)に比してどの程度であるかという視点から整理する。 1)サービスへの可達性と公共交通の評価意識 サービスへの可達性と公共交通の評価意識の関係性をみるに当たり、市民意識調査10)で聞いている自宅周辺の停留所の有無状況を用いる。本調査では、自宅から図2で示す勢力圏の距離の範囲内に鉄道駅、基幹・地域バス停留所があるか否かを聞いている。 この有無別の公共交通の評価の結果について図5に示す。満足度、期待度別にクラスカル・ウォリス検定を行ったところ、満足度にのみ有意差がみられた。満足度をみると駅、基幹バス、地域バスなどが重複して近接する場合に評価が高くなっており、重複せず単独の停留所のみある場合や、まったくない場合に評価が低くなっている傾向が確認できる。また必ずしもサービス水準の高い駅に近接していることが最も評価を高めるとはいえず、この結果では基幹バスに近接することが最も評価を高める要因となっている傾向が見受けられる。 一方、期待度についてはサービスへの可達性による差がみられず、サービスへの可達性に関係なく、サービス向上への期待は高いことが窺える。 1234567駅+基幹バス停+地域バス停(Sn=438,Hn=433)駅+基幹バス停(Sn=253,Hn=259)駅+地域バス停(Sn=73,Hn=76)基幹バス停+地域バス停(Sn=560,Hn=535)駅のみ(Sn=519,Hn=512)基幹バス停のみ(Sn=663,Hn=653)地域バス停のみ(Sn=294,Hn=293)なし(Sn=627,Hn=625)評価の平均点満足度期待度 ※評価は7段階評価の「満足(期待)している」を7点、「満足(期待)していない」を1点として得点化している ※Snは満足度のサンプル数、Hnは期待度のサンプル数 ※満足度はクラスカル・ウォリス検定1%有意 図5 停留所の近接性と公共交通の評価の関係

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