報告書 サービス享受度からみた住民の地域公共交通の評価構造に関する研究~個人の背景との比較を通じて~
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7(3)個人の背景と公共共通の評価意識の関係 個人の置かれた背景として様々なものが考えられるが、ここでは特に公共交通の評価への影響を考慮しつつ指標を選定する。まず個人そのものの特性として年齢、性別、および障害や病気による日常生活への支障程度を取り上げる。さらに個人の環境をとりまく特性として自動車の利用環境、家族構成の状況を取り上げる。家族構成は市民意識調査10)で聞いている就学前の幼児、小学生、中学生、65歳以上の高齢者との同居状況から整理する。これらの指標と図3で示した公共交通に対する満足度、期待度の関係をみる。 結果を表2に示す。クラスカル・ウォリス検定を行った結果、満足度では「年齢」、「家族に高齢者」は1%水準で、「自由に使える自動車の有無」は5%水準で有意差がみられた。個人そのものの特性である年齢は高齢になるほど評価の平均点が高くなっていることがわかる。また、個人の環境要因である自由に使える自動車は、ない方が公共交通の評価が高くなっており、自動車を使えない人の方が比較的公共交通に満足感を得ていることが窺える。また同様に家族に65歳以上の高齢者がいる場合に公共交通の評価が高くなっている。 次に期待度については「年齢」と「性別」において1%水準で有意差がみられた。年齢では満足度と対照的に高齢で評価が低くなっている傾向がみられ、特に65~74歳の平均点が他の年代に比べて比較的低くなっている。また性別については男性に比べて女性の期待が高いことがわかる。 以上のように公共交通の評価は単に個人そのものの特性だけでなく、むしろ状況によっては個人をとりまく環境にも影響を受けることが示された。

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