まちと交通 2004年3月 9号
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研究員レポートTTRI Letter №9 8Researcher's report(2) 都市交通システムとしての比較 玄関口バスと短距離交通実験バスが豊田市の交通システムとしてどのようなものであるのか、比較した。■ 運行目的 まず、運行の目的は両バスとも移動制約者への交通手段提供による中心市街地の活性化となっているが、実験バスではTDM施策としての意義も前面にあった。■ 運行ルート ザウルスでは経由しなかった市役所に、玄関口バスではバス停を設け玄関口への乗り入れを実施し、公共施設への交通手段としての役割が明確化している。■ 運行ダイヤ 実験時は最大需要を見出す目的があり、またボランティアのバス運転手確保による経費節減によって、高い頻度の運行を実施した。■ 利用者属性 実験バスでは30代以下の若い世代や学生、さらに運転免許を保有している人の利用が多く、実験バスは非日常的な興味を惹く交通機関であったことが推察される。(3) 利用者意識から見た玄関口バスの必要性 図-2に玄関口バス利用者アンケート調査結果を示す。図-2 玄関口バス利用者アンケート結果 まず、ザウルスの認知度を見ると、約40%が8年前の実験を認知し、約10%が利用経験を持っており、持続的なニーズが存在することがうかがえる。次に、玄関口バスの外出機会の変化を見ると、約48%の利用者が「増えた」と答え、中心市街地への来訪に貢献していると言える。さらに玄関口バスの代替手段としては徒歩が最も多く、歩行者支援システムとしての重要性がうかがえる。4.規制緩和の影響に関する分析(1) 施策展開の阻害要因の整理 先述のように都市交通システムとしての重要性・必要性が認められ、利用状況も芳しいと言える玄関口バスは、平成6年に実施された社会実験においても当該地区における公共輸送サービスの必要性が確認されていたが、その後、事業化に向けての具体的な検討は実施されなかった。そこに介在していた実現化に向けての阻害要因を以下の表-2に整理した。(2) 規制緩和という社会的変化の効用 規制緩和に端を発する社会動向により、前節で整理した施策展開の阻害要因のいくつかは取り除かれたと考えられる。特にタクシー事業者などが積極的にバス事業に参入する傾向が見られるが、豊田市では、実験バス運行時に競合が問題となったタクシー事業者と運行協定を結ぶことにより、玄関口バス運行が実現化したと言える。また、他地区における成功事例が、自治体内部での事業化に対する意識を高めている情勢も、この社会的要因の効果であると考えられる。5.おわりに 本稿では豊田市が運行している中心市街地玄関口バスを事例とし、需給調整規制の廃止という社会的要因が地方都市のバス交通施策展開に与えた影響を整理し、本事例では社会的要因によって施策の実現化が可能となったことを示した。今後、事業化の阻害要因として掲げた各項目について、客観的な検証を行っていく予定である。(資料提供:豊田市都市整備部交通政策課) バス事業成立 の困難性政策としての の困難性利用者意 識 表-2 バス交通施策展開の阻害要因
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