まちと交通 2004年3月 9号
7/28

研究員レポートTTRI Letter №9 6 Researcher's report 一方、簡易デマンドシステムの導入前では下り・上りバスともに平均遅れ時間は同程度となっているのに対し、導入後は市役所での乗降が無い場合(市役所に立ち寄らない場合)は、平日全体の全便の平均値を見ると、下りで約14分、上りで約11分程度と平均遅れ時間が短縮されている。 高齢者の利用が多い中心市街地バスの特徴において、乗降時にとりわけ時間がかかること、さらには病院での複数乗車により予測不能な遅れ時間が発生する現状とともに、市役所での呼出利用が2割程度とそれほど多くないことから、この時間短縮効果は、バス運行の定時性の確保に大きく寄与しているものと考える。図-3 平均遅れ時間(下りバス)図-4 平均遅れ時間(上りバス)4.利用者サイドからみた評価 市役所バス停でバスが玄関口に乗り入れることについては84%の回答者が「とても便利」「便利」と答えている。さらに乗降がある時だけ玄関口に乗り入れる簡易デマンドシステムについては、72%の回答者が「とても便利」「便利」と答えており、利用者意識からみた当該システムの評価は概ね良好であると考えられる。また、玄関口バスの満足度評価では、運賃やダイヤなどの満足度は高く、総合的な満足度も「満足」「まあ満足」を合わせて74%と利用者にとって高い評価を得ている。図-5 玄関口バスの利用者評価図-6 玄関口バスの運行に対する満足度5.中心市街地バスを考える  中心市街地バスの目的は、高齢化への対応に配慮する中で「公共交通サービスの向上と利用促進」と「中心市街地の活性化」にある。 システムについては定時性の確保に寄与し、利用者意識からみた評価は満足度が高い中で、今後の研究テーマをどう考えていくべきであろうか。 「クルマのまち」豊田で考えるべきは、とりわけ「中心市街地の渋滞問題」にあると考える。したがって、公共交通機関の永続的な確保の観点からの公共交通の支援のみでなく、クルマを活かした交通体系のあり方を考えることが重要である。問題となっている道路渋滞の緩和や交通安全の確保などへの対応を考えていくには、中心市街地や郊外での乗り継ぎについてのあり方を考えることは必要不可欠であり、その中でのITS施策を活用した施策展開について考えて行きたい。 また、利用者増加に配慮した情報提供のあり方など、実験を通じた施策評価の良し悪しのみでなく、利用実態や利用特性を十分に把握する中で、利用者サイドの観点に配慮しつつ、簡易デマンドシステムを活用した他路線への展開可能性についても検討して行きたい。

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る