まちと交通 2004年3月 9号
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主任研究員 本田 俊介豊田市中心市街地バスを考える研究員レポート5 TTRI Letter №91.はじめに 豊田市は「クルマのまち」として発展し、市民の移動の64%が自動車利用であり、公共交通の利用は鉄道が6%、バスは1%に過ぎない。また、利用者の減少から、バス路線は昭和45年の53路線から平成14年度は13路線と1/4以下に減少している。このため、高齢者や自動車を利用できない移動困難者が急増しており、市民意識調査における要望の上位に公共交通の充実が挙げられている。 公共交通に関する課題に関しては、「急増する高齢者に対応した利便性の高い公共交通のあり方」や「公共交通の利便性の向上と利用促進」に対し有効な手段が求められている。 中心市街地バスは「公共交通サービスの向上と利用促進」「中心市街地の活性化」「高齢化への対応」を目的とし、豊田市が策定したITS戦略プランのタウンプロジェクトの中にも位置づけられている。本稿では、豊田市中心市街地バスの安全で効率的なコミュニティバス運行を実現していくために、利用者サイドの観点から、今後のITS技術の公共輸送サービスへの適応に関して考えてみたい。2.中心市街地バスの運行状況 中心市街地バスの特徴は、施設の玄関口まで出入りすることにより、利用者の利便性を向上することにある、その乗り入れは利用者がいない場合はバス運行にとって無駄な経路走行であり、運行時間帯によっては遅れを生み出す原因となっている。そこでバス車両とバス停との通信により、当該バス停でのバス利用者有無をドライバーが確認して利用者が存在するときだけ施設玄関口にバスが立ち寄る簡易デマンドシステム(概念図を図-1に整理)を導入し、バス運行の効率化を図ったものである。図-1 簡易デマンドシステムの概念Researcher's report中心市街地バスの運行の現状は豊田市駅西口から税務署南を結ぶ1ルートで、1時間あたり片道2~3本の運行がなされ、27人乗りの車両一台で運行され、利用料金は100円である。図-2 玄関口バスの運行路線図 平成14年6月より試行運行され、昨年の7月には利用者が10万人を突破し、現在では1日あたり平均300人が利用している。バス車両は、マイクロバスをベースに開発された低床バスで、車内は高齢者の利用に考慮し、手すりや座席間隔に配慮するとともに、燃料にLPGを使用するなど、環境にも配慮された新車両が導入されている。 豊田市では、平成14年度「簡易デマンドシステムを活用したコミュニティバス検討調査」の中で中心市街地バスの利用者アンケート調査を行っており、研究所が行ったその評価結果から個人的に考える主要なポイントを以下に述べる。3.運行状況からみた評価 中心市街地バスの運行上の主な問題点には「時間遅れ」が指摘されている。これは道路渋滞や利用者のいない施設玄関口への乗り入れ及び車両の乗降し難さによる時間損失等があげられている。 特に、中心市街地バスは車両1台での往復運行となっており、時間2~3本の運行間隔となるため、運行ダイヤが20分間隔となる場合には、調節時間がなく、運行ダイヤの遅れが次便に即影響する現状となっている。 簡易デマンドシステム
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