まちと交通 2004年3月 9号
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寄稿3 TTRI Letter №94. ITSサービスの多様化 日本人は均一性の高い国民といわれてきたが、価値観とライフスタイルが多様化していることは、明らかである。私の身近では、有名大学から有名企業に入り、終身雇用の中で社会的地位を築いていくという雛形が崩れ、教え子たちも実にさまざまな人生を刻んでいる。世界中の情報が、直接パソコンで、個人的に獲得できることも、従来では考えられないものであり、この多様性に影響を与えている。 ITSは、交通施設の動的情報を提供することによって、個人個人が満足する多様な使い方を可能にするものと理解できる。一般的にいえば、マーケティングの発想で、個人の価値観とライフスタイルの多様性に着目し、特定のターゲットに適した商品を開発することが望ましい。そんなことは百も承知といわれるかもしれないが、本当に真剣に多様性を目指しているか、疑問に感じている。少なくとも、ITS倶楽部の全国大会とか、利用者の声や使い方の記録を吸い上げる仕組みを充実し、ITSを活用した新しいライフスタイルの具体例を集めて、その多様な使い方を普及させることが望ましい。ITSの達人たちにも出会いたい。携帯電話が待ち合わせ行動を変革したReviewように、動的情報提供の大きなシーズが見つけられるのではないかと期待している。 その一方で、自動収集された活動記録や移動記録をプライバシーに配慮しつつ活用できる社会的なルールを確立する必要がある。たとえば、現状では、ETC利用の記録は契約条項に抵触するために高速道路利用実態の分析に活用できない。特定個人の嗜好にあわせた情報提供など、ワンランク上の情報サービス提供と組み合わせて、個人情報の利用を許諾する仕組みが必要である。 ITSの地域展開では、岡山の事例のように、マルチモーダル情報が提供されるにいたっている。今後、ITS情報センターを開設してITSモデル都市を目指す都市では、日々の生活の中でITSサービスがどのように利用されているか、「賢いITSの使い方」を目指した市民生活調査と調査結果に基づく効果的な使い方のフィードバックも実施してほしい。TDM分野で開発された「賢い車の使い方プログラム」や、自分の時間を見つけ出すために「時間家計簿」をつける方法を、ITSに援用するものであるが、サービス開発者と利用者の二人三脚を可能にする「はちまき」のようなものになると期待している。無論、新規サービスを試用するモニター制度も有効である。ITSの交通まちづくりの例(資料提供:ITS世界会議愛知・名古屋2004日本組織委員会)ITSのショーケース例
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