まちと交通 2004年3月 9号
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主任研究員 増岡 義弘~欧州3都市交通施設調査~ リスボン・マドリッド・ミラノ海外レポート23 TTRI Letter №9はじめに マドリッドでのITS世界会議に参加するとともに、欧州3都市の交通施設調査を同時に行ってきた。3都市とも公共交通機関が発達し、自動車交通との共存がある程度図られている都市である。特に路面電車、地下鉄、路線バスについては、分かりやすく安価な料金体系とも相まって市民の足としての地位を確固たるものにしている。 今回は、鉄道系を主に3都市の交通事情を紹介する。リスボンの公共交通の概要 リスボンの公共交通はトラム、ケーブルカー、地下鉄、バス、郊外電車である。リスボンは7つの丘の街と称されるように、元々丘陵地に立地した都市であるため、道路も狭く、トラムが曲がりくねったアップダウンの繰り返す道を走っている。トラムが登れない3ヶ所の急な坂道にはケーブルカーが設けられ、市の中心ロシオ広場からコメルシオ広場に向かう、リスボン一の繁華街にはエレベータまである。また、郊外へ向かう専用軌道の鉄道も川に沿って走っている。 これらの公共交通は、CARRIS社(リスボン交通会社)やポルトガル国営鉄道の経営で、リスボンカード(24h,48h,72h,それぞれの子供用の全6種類)を購入すれば、市内のトラム、ケーブルカー、バス、エレベータが全て乗車できる。カードは空港、市内観光案内所、CARRIS社チケットブース及びリスボン観光局提携のホテルなどで購入することができ、購入時に使用開始日時が記入される。カードを提示するだけで、48に及ぶリスボンと周辺の美術館・博物館の入場が無料もしくは割引され、ポルトガル国鉄が運営するリスボン近郊路線:リスボン(カイス・ド・ソドレ)~カスカイス、リスボン(ロシオ)~シントラ、リスボン(オリエンテ)~シントラの3路線も無料区間に加わっている。また、空港バス・観光バス・フェリー等の交通機関も割引となるなど、旅行者には大きな特典があり、カード購入時にもらえるガイドブックに特典の詳細と観光ポイントへのアクセス方法が書いてある。 リスボンカード リスボンカードの料金 World €€€€€€リスボンのトラム リスボンのトラムは1873年に開通し(現在の市電になったのは1901年)、現在5路線(E12,E15,E18,E25,E28)で、全長72.0㎞あり、午前7時から午後9時まで走っている。1902年製の車両も現存し(博物館所蔵)、まだ走ることができる。リスボンのトラムはとにかく狭くて坂の多い通りを走っている。トラムは単独のいわゆる「チンチン電車」型が多いが、E15系統は連接型の最新式のLRTも走っている。E15系統のLRT(停留所はバスと共通)リスボントラムの料金リスボンのケーブルカー リスボンにはトラムでも登れないような坂道もある。斜度が30度近いものもあり、直線で登るためには、階段以外に手はない場所である。このため、いわゆるケーブルカー式のトラムが運行している。現在3路線(Glor-ia, Bica ,Lavra)が運行されており、いずれも1880年代からの路線で、午前7時から午後10時45分(Gloria線は午前0時55分まで)の営業時間(平日)である。歩道らしき狭い通りが軌道の脇にあり、歩いている人もかなりいる。普通の家の玄関が軌道に面している場所もある。Bica線に乗車したが、待っている時間が結構長く、乗車時間はせいぜい5分くらいなので、下りは歩いた方が早い。平均斜度が18度もあるので登りは利用した方が楽だ。 ケーブルカ(Bica線) €€€
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