まちと交通 2004年3月 9号
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研究主席 伊豆原 浩二ブラジル・クリチバ市のバスシステム視察記海外レポート19 TTRI Letter №9 Worldはじめに 昨年(2003年)9月に、岐阜大学竹内伝史先生と2人でブラジルのクリチバ市のバスシステムを見てこようと思い立ち、視察旅行をした。プライベートな旅であったため、公式訪問などは一切無く、事前に手に入れた資料を基にした行動で、街を自由に楽しく自分の足で見て廻ることができた。 9月11日(木)19:00に名古屋空港を飛び立ち、ロスアンゼルス経由で、サンパウロ・グアルーリョス空港へ12日(金)6:10着で23時間10分の所要時間であった。クリチバ市へは翌13日10:25に同空港から1時間でアフォンソ・ペーナ空港着、市の中心部(セントロ)まで空港バスで40分であった。クリチバ市には13,14,15日の3日間滞在した。 クリチバ市は、サンパウロ市の南東約400km、パラナ州の州都で、人口約160万人(都市圏人口は約270万人)、面積は約432km2である。海抜900mという高原都市で、私たちが訪れた時は9月中旬で、サンパウロでは暑かったのに肌寒く、夜はコート、セーターが必要であった。    図-1 クリチバ市マスタープラン1)クリチバ市の交通計画の特徴 クリチバ市の有名な都市交通政策は、土地利用計画、道路計画、公共交通システムを整合させていることといわれている。図-1はクリチバ市のマスタープランである。都心のポテンシャルを維持しつつ、放射状に5つの都市軸を設定し、その軸上に開発整備を進めている。この都市軸は図-2、図-3に見られるように3本の平行な道路を骨格としている。真中の道路では中央2車線を縁石で分離したバス専用レーンが整備されている。他の2本の道路はそれぞれ一方通行道路で多車線であり、自動車交通は主にこの道路で処理されていて、私たちが通った北東に延びる軸では4車線道路であった。中央の道路と2本の一方通行幹線道路で囲まれたエリアは、左右各々約100m幅であり、高度利用が義務付けられていて、容積率は400%、高さ制限はなく、建物用途は1~2Fは商業業務、それ以上は住居ということになって 図-2 幹線バスネットと乗り継ぎターミナル いるとのことである。このような軸以外では低層な住居以外の大規模な開発整備は制限され、この軸に沿って非常に便利な幹線バスシステムによる移動サービスが確保されていることで、市の開発整備の意図が明確になっている。しかしながら、私たちが訪れた北東方向の軸上では、図‐3に見られるように丁度中間点であるCabralターミナル辺りまで開発整備されていて、それより郊外ではまだほとんどなにもない状況であった。図-3 都市軸の断面構成と整備状況1)バスシステムの概要 バスシステムは、ネットワークと車両の形態・色(図-4)を組み合わせた仕組みで構成されている。5本の都市軸に沿ったバス専用レーンを走行するバスは「幹線バス」と呼ばれ、赤色の車両で1両から3両連接のもので、需要に応じて構成されており、3両連接のバスは全長25mで定員270人、最大      図-4 バス車両と色1)約1万5000人/時/方向の輸送力を持っているという。セントロのオソリオ広場を起点にして放射状に約400~500m間隔でバス停があり、バス停3~4箇所位の間隔で乗継ぎ用のバスターミナルがある。そこで、黄色の支線バス、緑色の環状バス、銀色の急行バスと接続している。 黄色の支線バスは所謂フィーダー路線で各コミュニティへサービスするものであり、 緑色の環状バスは5本の放射 幹線バスの乗継ぎターミナル間を環状方向に結んでいる。銀色の急行バスは都市軸のバス専用レーンとは別のルートを通り、基本的に図-5 幹線バス停車状況 は乗継ぎターミナルのみに

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