まちと交通 2004年3月 9号
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主任研究員 金光 敬一豊田市における高齢者の自動車と公共交通の選択に関する基礎的な検討研究員レポート11 TTRI Letter №91.はじめに 豊田市では、今後、高齢者が増えていくと予想されている。このため、これからの交通施策を考えるとき、高齢者が移動する際に、自動車と公共交通のどちらの選択を希望しているのか検討することは、有意義であると思われる。そこで、高齢者の交通手段の選択について、傾向を見るために、基礎的な検討をすることにした。 検討に当たっては、平成13年に豊田市で実施している『高齢者等の移動ニーズ・実態に関するアンケート』を活用した。 高齢者の交通手段の選択は、その要因として、主に自動車等の有無、利用できる公共交通の有無、年齢、世帯構成の4つを考え、2つずつの要因ごとに自動車等か公共交通か交通手段の選択割合を検討した。さらに、選択割合からわかった高齢者の交通手段の選択傾向について、少し詳しく調べてみた。また、交通手段の選択の傾向を交通施策に反映できるようにするために、地域ごとの特性について検討してみることにした。 2.調査内容 まず始めに、自動車等の有無と年齢と世帯構成での自動車等の選択の割合を見る(図1)。この図は、自動車等を選択する割合を、その要因別に整理したものである。つまり、世帯構成で(子供等と同居)、自動車等の有無で(ある)のコラムに書かれた数字の85は、世帯構成の問いで「子供等と同居」、自動車等の有無の問いで「ある」と答えた高齢者で、移動手段として自動車等を選択する人の割合が85%いることを表している。この図1から、自動車等を選択する割合は、自動車等がなく高齢者のみの世帯と一人暮らしの世帯、自動車等がなく前期高齢者の世帯の場合を除いて、86%~52%と高い。また、自動車等を選択するのに、自動車等の有無は大きく影響し、次に世帯構成が影響し、年齢はあまり影響していないことがわかる。図1 自動車等の有無・年齢・世帯構成別自動車等の選択割合 次に、公共交通の有無と年齢と世帯構成での自動車等の選択の割合を見る(図2)。図2では、自動車等を選択する割合は、公共交通がなく一人暮らしの世帯の場合を除いて73%~52%と高い。 また、自動車等を選択するのに、 Researcher's report図1の自動車等の有無ほどではないが、公共交通の有無が影響していることがわかる。また、世帯構成も交通手段の選択の割合に影響している。図2 公共交通の有無・年齢・世帯構成別自動車等の選択割合 さらに、自動車等の有無と公共交通の有無と世帯構成での自動車等の選択の割合を見て、図1、2でわかったことと同様の結果を得た。 以上のことから、豊田市の高齢者が自動車等と公共交通のどちらの選択を希望しているのかは、自動車等へのニーズが80%~50%あることから、自動車等の選択を希望していることがわかる。 また、移動手段の選択に影響する要因としては、自動車等の有無が大きく影響し、次に、公共交通の有無と世帯構成で、年齢はあまり影響しないことがわかった。 ところで、この図の自動車等には、徒歩・自転車等が多少含まれている(高齢者4141人のうち 徒歩89人、自転車172人)。 そこで、このことをさらに詳しく見るために、高齢者の移動の実態から、年齢区分別移動手段を調べた(図3)。図3 年齢区分別移動手段 この図から、高齢になると、「自家用車(運転)」が少なくなり、「その他」や「空白」が多くなっていることがわかる。つまり、徒歩や自転車などの選択の割合が多くなっていることがわかる。このことから、高齢者は年齢が増すにつれて、徒歩と自転車などの選択の割合が増加し、遠い距離を移動しないのではないかと言うことが推測される。 さらに、参考として、年齢区分別免許所有者数と所有率の経年変化を調べた(図4、5)。今後、豊田市の高齢者
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