まちと交通 2004年3月 9号
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研究員レポートTTRI Letter №9 10Researcher's report多くバリアフリーの観点から問題があるが、エレベータの追加予定があり、ある程度の改善が見込まれている。また、駅との接続部分で雨除けの設置工事が始まっており、豊田参合館などの隣接施設に傘なしでも行けるように改善が進められている。 また、駅周辺の歩行環境では、歩道が狭かったり夜間の照明が不足していたりして、整備が十分でない箇所が目立つ。駅からの端末交通として徒歩は欠かせないし、安全面からも整備が望まれる。同時に、まちの中に設置されている情報表示でも、歩行者向けのものは少ないという指摘がある。 駅周辺に関しては、中心市街地の活性化も大切である。駅の周りの魅力を高め、人が集まるようになってこそ公共交通を生かせるのであり、そのためには駅の近くに事業所や店舗や住宅が集積されることが望まれる。豊田市駅東側には再開発の予定があるので、魅力が高まることを期待する。5.利用者の意識 先に挙げたようなサービスの課題が解決できたとしても、なお利用者が不満に思うことは残るだろう。例えば、自動車に慣れた人にとって、買物をした後で荷物を抱えて電車に乗るのは嫌であろう。このような場合、家まで荷物を届けてくれるようなサービスがあれば、便利かもしれない。また、公共交通は自動車と異なり、個人的な空間を確保できない。したがって、ものを食べるにも、音楽を聞くにも、話をするにも、何かにつけ制約がある。これを我慢できないと思う人もいるだろう。 ところで、豊田市で実施している市民意識調査によれば、豊田市のよくないところ・嫌いなところとして、「交通の便が悪い」が1番目に選ばれる状況が10年以上続いている。 既に述べたように、バス路線の減少は著しく、家の近くにバス停がなくなってしまったと嘆いている人もいるだろう。しかし一方では、駅やバス停から遠いところに、新規の住宅がたくさん建っている。これは、住む場所を選択するうえで、公共交通はあまり重要でないと考えていることの現れであろう。交通の便が悪いと考える一方で、公共交通を重視しないという、矛盾するような状況がみられるのである。 このように公共交通に分の悪いことも多いが、最近、公共交通利用が増加する可能性を示す事例があった。トヨタ自動車では、本社周辺の朝の通勤渋滞を緩和する目的で、通勤手段を自動車から公共交通に転換することを推奨した。これに合わせ、朝夕に専用のシャトルバスを運行し、豊田市駅と本社地区、三河豊田駅と本社地区内の東部方面を結ぶなどにより、サポートしている。これにより、名古屋方面に住む従業員を中心に公共交通への転換が進み、渋滞がやや緩和する結果となった。6.今後の展開 豊田市内の鉄道については、この先1年間程においてもいくつかの変更が計画されている。主なものを挙げると、今年4月から三河線の猿投駅から西中金駅までの4区間が廃止され、代替バス運行になる。さらに、平成17年3月には愛環に愛環梅坪駅と海津駅が新設され、同じ頃には、東部丘陵線が愛環の八草駅と地下鉄東山線の藤ヶ丘駅を結ぶことになる。 また、これまでの検討に関連して、今年1月に豊田工業高等専門学校の交通・都市工学研究室と共同で、駅と連絡通路の利用に関するアンケート調査を実施した。アンケートにご協力いただき、貴重なご意見をくださった皆様に感謝を表する。なお、現在、集計作業を進めており、別途、結果を公表することを考えている。写真1 豊田市駅前写真2 ペデストリアンデッキ写真3 ペデストリアンデッキから見た新豊田駅
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