まちと交通 2004年3月 9号
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主任研究員 大場 健司豊田市の公共交通に関する検討研究員レポート9 TTRI Letter №91.はじめに 豊田市では移動手段として自動車の利用が多く、鉄道やバスなどの公共交通の利用は少ない。自動車は確かに便利な移動手段であるが、利用が集中する通勤時間帯などには、市内のあちらこちらで渋滞が発生し、問題になっている。その対策の1つとして、公共交通の利用を増やすことが考えられるが、簡単にできる話ではない。 この問題を考えるため、平成14年10月から研究会を開催し、自動車から公共交通への転換の可能性と公共交通の活用及びその課題について、鉄道を中心に検討してきた。研究会は、学識経験者、交通事業者、商工会議所、市、通勤利用企業にご協力いただき、これまでに10回開催している。本稿では、この中で検討してきたことについて述べる。2.豊田市内の公共交通の概観 平成13年のパーソントリップ調査によると、豊田市の全目的代表交通手段構成比は、鉄道、バス、自動車のそれぞれについて、6.6%、0.4%、71.5%となっており、愛知・岐阜・三重の中京都市圏全体で、9.2%、1.3%、57.9%であるのと比べて、鉄道やバスの比率が低いことがわかる。但し、このように自動車依存が高い傾向は、全国の地方都市でも多くみられる。 また、豊田市内の公共交通網については、バス路線が昭和45年には53路線あったが、現在(平成16年2月)は乗合バス事業者による11路線とその他4路線の合計15路線に、大幅に減少している。一方、鉄道は、昭和37年の路線延長が31kmだったのに対して55kmに延伸しており、乗降客数もそれにつれて伸びている。 現在、豊田市内には、名古屋鉄道の三河線、豊田線、愛知環状鉄道の3路線があり、26駅が設置されている。これらの路線は、名鉄の豊田市駅と愛環の新豊田駅で連絡しており、この2駅は、3路線を結節する拠点となっている。同時に、この2駅は豊田市の中心市街地に位置し、豊田市の玄関口としての役割も担っている。 近年の市内全駅の乗降客数の合計は、概ね8万人余/日であるが、両駅の乗降客数は平成13年には1番目と2番目であり、以下の内容でも両駅を話題の中心にしているものが多い。3.サービスの課題 運行本数については、名鉄では4本/時間で運行されており、沿線の状況を考慮すれば、少ないともいえないだろう。一方、愛環では2本/時間と少ない状況である。運行本数の増加が望まれると共に、待ち時間を上手に活用Researcher's reportできるような施設が併設されるとよい。 広域圏から豊田市の交通を捉える場合、名古屋駅との接続が重要になるが、豊田市中心部から名古屋駅へは約50分かかる。この時間距離は、名古屋市近郊の他都市と比較して長く、例えば、ほぼ等距離にある隣の岡崎市からは約30分で20分程短い。この差は豊田市からは各駅停車の運行しかないことや乗換待ち時間の影響によるもので、何らかの時間短縮が望まれる。 また、豊田市内発着の移動の場合は、バスのみならず鉄道もほとんど利用されていない。これは、駅周辺に住宅が少ないことが大きな要因だが、現在の鉄道が短距離移動に不向きという面もあるかもしれない。この参考になりそうな事例として、同程度の都市規模である豊橋市の市電を挙げてみる。この市電は、一部分岐を含む5km足らずの軌道に13の電停があり、5~8分毎に運行している。この例に限らず、路面電車は近年全国的にも見直される気運が出ており、豊田市で直ちに応用できるとは思わないが、市街地内移動の1つの形態を示している。 豊田市駅と新豊田駅は隣接するとはいえ、200m余りの距離がある上に、運営する会社も異なっているなど、その乗換えはあまり便利とはいえない。平成15年には名鉄でトランパスが導入され、切符を購入する手間が減っただけでなく、名古屋の地下鉄などでも使える共通券となり、ずいぶん便利になった。今後、名鉄と愛環の間でも共通券が実現すると望ましい。また、両駅間で乗換える場合の接続時間は、必ずしも適切とはいえず、運行本数が十分でないだけに、改善できるとよい。このような中でも、2社間の協調がみられることがあり、それは2駅の構内に相手側の時刻表が掲載されたことである。これは乗換え利用者の便を図るもので、歓迎したい。 駅から家までの端末交通は、バス路線の減少に伴い、不便な状況になっている。バスを新たに走らせたり、郊外の駅の近くに駐車場を整備してそこから電車を利用したりする方法も考えられるが、必要な費用と需要のバランスを考えると容易でない。4.駅周辺の課題 先にふれたように豊田市駅と新豊田駅は離れており、その間は連絡通路となるペデストリアンデッキを歩くことになる。まず、この距離が問題になるが、これを根本的に解消するには駅や路線の統合が必要で、用地確保や高架の建設など莫大な費用と年月がかかってしまう。 また、ペデストリアンデッキは両駅の改札の位置よりも高くなっているため、駅と接続する両端に段差があり、やや歩きづらい。同様に、駅やその接続部分には段差が

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