まちと交通 2024年5月 87号
4/6

域を広げた検討の重要性が高いものと考えています。5.おわりに5.おわりにた形で参画しました。 アンケート調査結果からは、実際に自動運転バスに乗車してもらったり、啓発チラシを読んでもらったりすることで、自動運転バスへの理解や安全性に対する印象に良い影響を与えることや、導入への期待感が高まることなどを確認することができました。 自動運転バスの社会実装に向けては、まだまだ課題も少なくありません。弊所がこれまで蓄積してきた技術や知見を活用しながら、今後も豊田市における自動運転に関する図/作成・配布した啓発チラシ「対策意義伝達の難しさ」という点については、地域による差が生じる理由が明瞭ではありません。この理解を助ける点において、例えば、今回の調査で併せて「住民同士の助け合いの慣習・雰囲気の有無」を聞いており、それと「住民同意の得やすさ」のクロス集計を実施した結果、中山間の多い都市計画区域外では、助け合いの慣習や雰囲気の状況と住民同意の得やすさの相関関係が強く表出していましたが、DIDではそうならなかった点があります。すなわち、市街地であるという点での住民間のつながりの希薄さ・複雑さが影響した可能性があります。無論、よりわかりやすい対策意義の伝達方法についても検討を加えることは不可欠であることは言うまでもありません。 さて、二つ目の「市街地ではないにもかかわらず、ゾーン30プラスの住民同意が得られるとするのはどういう理由か」については、特にゾーン30プラスの設定によって住民が「不便にならない」という点、さらに都市計画区域外では「大型車の多さ」という点が指摘されました。市街地ではない地域では、地域の交通安全の問題より、交通円滑化への影響に意識があり、それに対して影響を与えるか否かがゾーン30プラスの住民同意においての一つのポイントである点が確認できたといえるでしょう。また、中山間地域における大型車の問題が挙げられた点は、当該問題が産業都市である豊田市という特性が下地にあり、中山間地域の交通安全上の大きな課題となっている点が表象された可能性もあります。ゾーン30プラスの住民同意という面にとらわれず、交通安全対策の推進という観点からこの結果は示唆をえるものがあるように思われます。また、市街地のなかでもすでにゾーン30が整備されている自治区では、その整備実績が住民同意の得やすさに影響している点が伺えました。この点は、対策の推進を図ることが住民同意の得やすさを加速させる可能性を示唆するものです。 なお、紙面の制約上、詳しく言及ができませんでしたが、地域特性とゾーン30プラスの住民同意の得やすさの関係性からは、自治区における若年層、高齢層の多さが住民同意の得やすさに影響をしている一方、発生している事故の多さはそれほど影響しない可能性が見受けられました。つまり、ゾーン30プラスの検討においては、安易に事故の多さを訴えるより、地域に住まう人の特性(高齢である、など)にフォーカスし、安全、安心の確保に主眼を置いて検討を進めることが、住民同意を得ていく上で有益であるかもしれません。ただし、この結果は統計的な支持が得られていませんので、地[1]豊田市では298の自治区と呼ばれる公益性を持った事業、活動を展開し、助け合いに満ちた住みよい地域づくりを目指す自主的な任意団体(町内会のような組織)がある。 本研究で導出した成果は、豊田市といった一地域の状況をみたものであり、おのずと限界があります。今後の一般化に向けては、他地域でも同様の調査等を実施するなどして、知見を積み上げる意義は高いものと考えます。しかしながら、本成果を通じて得られた知見からゾーン30プラスの推進が各地域で幾ばくかでも図られることとなれば幸甚です。 最後になりますが、本研究を遂行するにあたり豊田市都市整備部交通政策課から多大なる協力を得ました。また豊田市自治区長の皆様には調査へのご協力を賜りました。ここに記し、感謝の意を表します。なお、本稿は豊田工業高等専門学校の山岡俊一教授と共同執筆し、第68回土木計画学研究発表会にて報告した論文「ゾーン30プラスの住民合意にかかる基礎的考察」を基底としています。取組みに貢献していきたいと考えています。【謝辞】この場をお借りしてアンケート調査にご協力いただきました地域住民、自動運転バス利用者の皆さまと関係者の皆さまに深く感謝を申し上げます。主任研究員 大澤 脩司 2023年11月30日〜12月28日に、中心市街地玄関口バスの路線上において、自動運転バスの実証運行が行われ、弊所も「社会受容性の向上」の観点から啓発チラシの作成やアンケート調査の実施といっ豊田市自動運転バス実証運行に関する活動報告研究員報告

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る