まちと交通 2024年5月 87号
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に定期的に送付される区長便を通じて全自治区(298自治区)への調査票の配布、郵送ならびに電子メールによる回収を行いました。(有効回答は232票) 調査項目は、自治区におけるゾーン30プラス設定に際する住民同意の可能性です。調査ではゾーン30プラスについての説明の後、「ゾーン30プラスを貴自治区で設定するとした際に、住民同意は得られると思いますか。また、そのように考える理由について教えてください」と伺いました。住民同意の可能性は「間違いなく同意は得られると思う」〜「全く同意は得られないと思う」の5水準での回答を依頼しました。理由は、自治区の多様な特性を満遍なく捉えるため、自由記述で回答を依頼しました。 また、ゾーン30プラス設定の住民同意の可能性は、都市部、市街地といった導入地域の市街化程度に加え、多様な地域の特性が反映される可能性があります。そのため、回答は導入地域の市街化程度別に整理するとともに、自治区それぞれの年齢階層別の人口密度や人口当たりの事故件数といったデータも併せて収集しました。3.結果3.結果特集(1)ゾーン30プラス設定に際する住民同意の可能性(2)ゾーン30プラスの住民同意が得られる理由図1/エリア別ゾーン30プラスの住民同意の可能性図2/ゾーン30導入状況別ゾーン30プラスの住民同意の   可能性(DIDのみ) 2021年8月に、警察庁と国土交通省は、最高速度30km/hの区域規制とハンプや狭さくといった物理的デバイスとの適切な組み合わせにより、生活道路の交通安全の向上を図ろうとする区域をゾーン30プラスとして設定する方針を打ち出しました。ゾーン30プラスは、これまでの類似対策と異なり、道路管理者、交通管理者の連携の下で整備計画を策定することが規定され、その策定に際しては地域に住む住民の皆さんの同意(以下、住民同意)が図られることとされています。この「住民同意」を適切に図る上において、どのようなことが重要であるのかを道路管理者や交通管理者が事前に把握できていることは、今後のゾーン30プラスの導入推進において有益ではないかと考えます。 本稿では、ゾーン30プラスの住民同意にかかる規定要因を整理することで、今後のゾーン30プラス推進のための基礎資料を提供することを目的として豊田市にて実施した研究成果について報告します。2.方法2.方法 調査は住民意識などの実態を最もよく把握し、さらに自治区[1]の方針を決める最終的な決定権を持っていると判断できる自治区長を対象に実施しました。自治区の執行部を担う区長役員会での依頼、各自治区傾向を見ますと、DID > 都市計画区域(DIDを除く) > 都市計画区域外の順に「間違いなく同意を得られると思う」「同意を得られると思う」の回答割合が高いです。市街地であるDIDでは7割を超える自治区で「間違いなく同意を得られると思う」「同意を得られると思う」と回答しています。また都市部である都市計画区域においても5割以上の自治区で同意が得られるとしています。他方、都市計画区域外においては、同意を得られるとするのは2割強の自治区にとどまり、さらに4割近い自治区では同意を得られないとする回答が見られています。 次に、市街地であるDIDエリアに注目し、ゾーン30導入状況別の傾向を見ます。なお、豊田市では2023年3月末現在、DIDエリア外にゾーン30は整備されていません。ゾーン30整備済においては、やや同意を得られるとする回答割合が多いです。しかしながら、両者に統計的な有意差があるとは言えませんでした。 【図3】ではエリア別の、【図4】ではゾーン30導入状況別のゾーン30プラスの住民同意が得られる理由を示します。まずエリア別の傾向を見ますと、全体を通じて「子供・児童の安全確保」「速度の速さ」「道路構造からみた必要性」「抜け道利用の多さ」の指摘割合が高いです。なかでも、「子供・児童の安全確保」は都市計画区域、都市計画区域外で指摘割合が最も高く、DIDにおいても「速度の速さ」についで2番目に指摘割合が高いです。DIDでは、「速度の速さ」が最も指摘割合が高く、2割強で理由として挙げられています。また、「自動車の多さ」を指摘する自治区が他のエリアに 【図1】ではエリア別の、【図2】ではゾーン30導入状況別のゾーン30プラスの住民同意の可能性を示しています。エリア別の研究部次長・主幹研究員 三村 泰広1.はじめに1.はじめにゾーン30プラスの 推進にかかる住民合意

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