は先に述べたように、これまで様々な施策やイベント等が実施されてきています。これらの取組について、にぎわいを創出する取組としての効果を把握することができれば、今後の「効果的な取組」を検討する上で役に立ちそうです。それでは、どのように効果を把握すれば良いのでしょうか? この疑問に対しては様々なアプローチが考えられるところですが、筆者は特に「人流分析」にヒントがあると考え、研究に取組んでいます。 本稿では、携帯電話の位置情報データを用いて豊田市の中心市街地を対象に実施した人流分析の結果について、ご紹介したいと思います。い)やラグビー日本代表戦開催日■STREET&PARK MARKETの一部開催日(毎月第1、第3土曜日開催@桜城址公園)■西側エリアではT-FACE A館の第1段リニューアルオープン日(2022/3/25)■東側エリアでは挙母祭り開催日(2022/10/15, 16)やWRCリエゾン開催日(2022/11/11)図2/日々の来訪者数の変動の例(まちなか回遊ゾーン東01)(1)分析に使用したデータ 携帯電話位置情報データとして、KDDI株式会社が提供するKDDI Location An-alyzer1)(KLA)を使用しました。本データは、auスマートフォンの位置情報データで、同意を得たユーザーのデータのみが活用されています。この位置情報データに対して契約者属性を紐づけることで、性別・年代等の属性に着目した分析も可能なデータです。 KLAでは任意の領域を地図上で設定することで、その領域内の来訪者に関するデータを得ることができます。そこで、本研究では2021年1月1日〜2023年8月31日の期間を対象に、豊田市中心市街地を【図1】に示すような4つの領域に分割して各領域の来訪者に関するデータを収集しました。なお、この領域は「都心環境計画」におけるゾーン設定のうち、「まちなか回遊ゾーン」を参考にして設定しています。それぞれにおいて、2021年1月1日から2023年8月31日までの期間で、来訪者数が他の日と比べて顕著に多い(あるいは少ない)日を外れ値として抽出した結果が【図3】と【図4】に示すとおりとなります。なお、図中の凡例の意味は以下に示すとおりとなっています。観測値:外れ値以外の来訪者数の生データを折れ線グラフで描画したもの。平準化後:平準化を実施した後の来訪者数を折れ線グラフで描画したもの。上側制御線:来訪者数が他の日に比べて顕著に多い方向で外れ値を判断する境界線。下側制御線:来訪者数が他の日に比べて顕著に少ない方向で外れ値を判断する境界線。外れ値:上下の制御線を超えた観測値を外れ値として赤点で描画したもの。 外れ値として抽出された日にイベント等、何らかのにぎわい創出につながる取組が実施されていれば、その取組はにぎわいを創出する効果がありそうだと判断することができます。そこで、外れ値に該当する日にあった出来事について整理すると、以下のような結果が得られました。 上側制御線を上回る外れ値(来訪者数が他の日に比べて顕著に多い日)について:■市政70周年式典の開催日(2021/3/6)■おいでんまつ総踊り開催日(2022/7/30、2023/7/29)■おいでんまつり花火大会開催日(2022/1/8、2022/7/31、2023/7/30)■Jリーグの試合開催日(数としては最も多 下側制御線を下回る外れ値(来訪者数が他の日に比べて顕著に少ない日)について:ii.平準化の前後でデータを比較し、全体的なデータの傾向から大きく乖離しているデータがあれば、それを外れ値として抽出する KLAでデータ収集を行った4つの領域(2)分析の方法 KLAで収集したデータを可視化すると、【図2】のように来訪者数が日々どのように変動しているのかを把握することができます。しかし、この図だけでにぎわいの創出に効果があった取組を把握することは非常に難しそうです。 そこで、データから「にぎわいがあったと思われる日」を抽出する方法を検討しました。具体的には、「にぎわいがあったと思われる日は他の日に比べて来訪者数が(目に見えて)多くなっているはずだ」と考えることにしました。そして、これは「データの外れ値」として捉えることができるのではないかと考え、外れ値を検出する方法をKLAで収集したデータに対して適用することとしました。以下に外れ値検出の簡単な手順をお示しします。ⅰ.収集したデータのままでは、トレンド(長期的なデータの変動の特性)や周期的な変動、ノイズが混ざっており扱いが難しいため、データの平準化を実施する
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