特集表1/当研究所が取り組んできた高齢ドライバ関連研究2016年2017年2018年2019年2021年2022年●高齢運転者を対象とした経路探索アルゴリズムの開発年号●高齢者モビリティの選択要因と支援方策に関する研究●高齢運転者の法令違反特性及び防止対策に関する考察● 車両挙動を考慮した生活道路にける高齢運転者への助言型ISA効果検証● 豊田市の高齢運転者の事故特性を踏まえた事故対策に関する検討● 高齢運転者を対象とした後付け型ADASの多様な効果に関する研究● 空間認知特性に着眼した高齢運転者が加害者となる出会い頭事故対策に関する応用的研究● 高齢運転者を対象とした後付け型ADASの多様な効果に関する研究● 高齢運転者を対象としたテレマティクス自動車保険の社会受容性に関する実証的研究研究テーマ 高齢ドライバが関わる交通事故低減は重要な社会課題です。高齢の運転免許証保有者数は1945年〜49年生まれの団塊の世代と1970〜74年生まれの団塊ジュニア世代のそれぞれでピークを迎え、2050年まで高齢化が続くと予想されています1)。したがって、この課題を取り扱う意義は大きく、当研究所でもこれまでさまざまな研究に取り組んできました【表1】。 本報では、これらに続く9件目の研究「高齢ドライバの人間特性と運転行動を考慮した危険事象の推定」について報告します。 現在の高齢ドライバ対策としてよく知られるのは「高齢者講習」です。高齢者講習は、70歳以上のドライバが運転免許更新時に受講することが義務付けられている講習です。その目的は、ドライバが自身の心身の状態や運転技能を理解し、それに応じた助言や指導を受けることとされています。受講が義務化されたのは1998年からで、その後さまざまな変更を経て、2020年に公布された改正道路交通法(2022年施行)により現在の流れとなりました。 法改正による大きな変更点の一つは、運転技能検査の新設です。近年認知機能の状態に依らない交通事故が散見されることから、運転技能そのものを観察し、評価することの重要性が認識され、設置されました。運転技能検査の対象者は、75歳以上で、一定の違反歴のあるドライバです。検査内容は、指示速度による走行、一時停止、右折・左折、信号通過、段差乗り上げ、その他検査員の判定といった高齢者講習の実車指導と共通する部分があります。実車指導は指導や助言を目的としているため、その成績は免許更新には関わりません。が、運転技能検査は合格しなければ免許は更新できません。認知機能検査とも共通しますが、「講習」と「検査」とは位置づけが異なるということです。 筆者が当研究所で研究課題を提示した2022年当時は、高齢ドライバの増加による現場(講習指導員)の負担増や、認知機能検査や高齢者講習の予約の取りにくさが問題視されていました。加えて、運転技能検査が更なる負担につながるという懸念も指摘されていました。法改正から1年たちましたが、現在の高齢者講習や運転技能検査の予約状況を概観すると、現場の努力もあり改善に向かっている地域もあるようです。 高齢者講習は運転免許証更新のタイミングで受講しますが、その主旨である「ドライバが自身の心身の状態や運転技能を把握する」ことはもっと身近であることが望ましいと考えます。特に、実車指導のような実際の運転の評価は、運転技能検査が新設されたことからもわかるように、きわめて重要視されています。さらに、運転に関わる機関だけでなく、任意の届出制度のある医療の立場からも心身の状態のみで運転の適否を判断するのではなく、実際の運転を考慮して判断する必要があることが指摘されています。それでは、実際の運転を評価する研究部 主席研究員 山岸 未沙子はじめにはじめに現在の高齢ドライバ対策現在の高齢ドライバ対策運転モニタリングと運転評価運転モニタリングと運転評価高齢ドライバの 交通事故低減を目指して
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