まちと交通 2023年11月 85号
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覗くと、明治生まれ座談会の中には、「集合はラッパの音でし、集まって学校へ来た。」という発言が見られる。また、仙田満・上岡直見編「子どもが道草できるまちづくり」には、「毎朝、小学校に通ずる通学路には、各村落の存在を主張するいくつもの隊列があった。」とあり、集団登下校は安全面だけではなく、地域のコミュニティ形成の一要素を担ってきた可能性もある。 また、イギリスなどアングロサクソン系の国々では、1990年代から、Walking School Bus(WSB)と呼ばれる集団で歩いて登校する取り組みが始まっている。しかし、一部の地区レベルでの取り組みであり、やはり全国的に学校レベルで行われている我が国の集団登下校は貴重な文化であるといえよう。 一方で、集団登下校の小学生の列に自動車が突っ込み、多くの小学生が死傷するといった重大な事故が発生すると、集団登下校はかえって危険ではないかという<今後の予定> ●日時:2024年1月17日(水) 18:00〜19:00●会場:1月17日「豊田市中央図書館6F 多目的ホール」 (豊田市西町1丁目200番地)2023年11月85号懸念や議論が沸き起こることもある。筆者が都道府県別の集団登下校実施学校率と児童当たり交通事故死傷率を用いて分析したところ、集団登下校により、事故が起きたときに複数の児童が巻き込まれる可能性はあるものの、事故頻度自体が減少することで全体としての死傷者数が減少するため、集団登下校が一定の交通安全効果を有していることが示唆された。冷静な議論が必要である。それ以外でも、これまで集団登下校を実施してきた小学校であっても、子供の減少により地区内で集団をつくれないこと、集団行動であることが子供同士や保護者間のトラブルに繋がることなどにより、集団登下校の廃止を検討したり、廃止した学校も見られる。 今後、しっかりと実態を把握し、集団登下校の歴史的経緯やコミュニティとしての役割も踏まえながら、よりよい方向性を見出していく必要があるだろう。 我が国では小学生の登下校の安全を確保するための取り組みとして、多くの小学校で集団登下校を実施している。文部科学省の調査によれば、平成26年度に集団登下校を恒常的に実施した小学校の割合は62.9%である。 公的な文書として集団登下校が扱われ始めるのは、昭和37年の文部省事務次官通達「交通事故の防止について」である。しかし、地域によっては明治時代末期や大正時代初期から独自に実施していたということを示唆する文献もある。例えば、筆者の住む豊橋にある杉山小学校の創立100周年記念誌「杉山100年のあゆみ」を「まちべん」に参加しませんか※詳細はWEBに掲載中 (https://www.ttri.or.jp/machiben/)お知らせ高齢ドライバの交通事故低減を目指して集団登下校を考える豊橋技術科学大学建築・都市システム学系 准教授松尾 幸二郎公益財団法人 豊田都市交通研究所特集

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