まちと交通 2023年8月 84号
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■3■■2■■■■■■■■■3■■3■■■■■■■■■■■3■■1■■■■■■■■■■■■3■■0■■図1/歩行者が待っているとき止まっているか■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■3■■3■■■■■■■■■■■3■■2■■■■■■■■■■■3■■1■■■■■■■■■■■■3■■0■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■10■■9■■■■■■■■■10■■7■8■■■■■■■■10■■4■6■■■■■■■■■10■■1■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■10■■2■3■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■0%20%40%60%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■0%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■0%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■0%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■80%100%0%20%40%60%20%40%60%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■60%80%20%40%20%40%60%80%40%60%80%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■100%●2016年にJAFから最初の発表があったとき、実感無く「1位でも半数以上は止まっていない」ことを認識し、まだやるべきことはある!と考えた。●全国1位を「誇り」とする啓発を展開ドライバーはルールを守り、歩行者はマナーをアップ!(その後のさらなる停止率向上につながった)●関東の他県からの移住した職員の感覚では、移住当初、止まってくれることに驚いた。●歩行者にはやさしい運転を心がけているが、クルマどうしの運転は荒さがあると感じている。図3/警察による取り締まり強化はきっかけとなったか図4/JAF調査の認知状況■■■■図2/歩行者として待っているとき止まってくれるか■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■80%100%0%20%80%100%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■100%100%■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■JAF■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■JAF■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■「クルマのまち」だからこそ 歩行者が死亡あるいは重傷となるリスクが高い「人対車両」の交通事故。このような事故を撲滅しようと、全国的に交通安全対策が講じられています。豊田市でも「歩行者保護モデルカー活動」「とまってくれてありがとう運動(当研究所の提言で実施されています)」などのソフト的対策と併せて「ぴかっとわたるくん」や横断歩道前後のカラー舗装など、ハード対策にも取組んでいます。面的な速度規制により生活道路の安全・静穏化を目指す「ゾーン30」「ゾーン30プラス」も歩行者事故を減らす方策です。「クルマのまち」だからこそ、歩行者を優先する運転を「文化」として定着させたいという思いから研究に取組んでいます。■長野県はなぜ「止まる」のか JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)が全国の都道府県で、信号の無い横断歩道を歩行者が渡ろうとして待っている時に自動車が停止して歩行者を渡らせる割合を調査し、ランキングを公表しています。この結果はさまざまなメディアで報道されており、ご存知の方も多々いらっしゃると思います。 この調査は2016年から実施されており、2018年からは各都道府県の「成績」が公開されています。初回から「ダントツ」で全国1位に君臨するのは長野県。初回調査では■アンケートしてみました より効果的に歩行者優先運転を促す施策検討の基礎資料とする目的で、国内4都市を対象にドライバーの意識調査を実施しました。当研究所のフィールドである豊田市に加え、地方都市の県庁所在地であり比較的公共交通が整備されている福井市、大都市部でありクルマ依存が低いと考えられる世田谷区、そしてJAFの調査において無信号横断歩道での停止率が高い長野県の県庁所在地である長野市で、それぞれの在住または在勤者を対象としたWeb調査です。 【図1】は「横断待ちの歩行者を見かけたときに止まっているか」というドライバー視点での行動を尋ねた結果で、【図2】は「渡ろうとしているときにクルマは止まってくれるか」という歩行者目線での回答結果です。ドライバー目線では都市間にさほど差が無いのに対して、歩行者目線では長野市が顕著に止まってくれることが「よくある」という結果でした。長野市のドライバーはさほど意識せずとも歩行者を優先しているのかもしれません。 【図3】も長野市が他都市と顕著に異なった回答であった設問です。歩行者優先を心がけるきっかけとなったこととして「警察による取締りが増えたから」に対する回答は、他3都市では50%程度が「(よく)あてはまる」だったのに対して、長野市は30%弱という結果でした。取締りが無くとも歩行者優先の慣習が根付いているということなのでしょうか。全国平均の停止率が7.6%だったのに対して長野県は48.3%、直近の2022年調査では全国平均が39.8%まで向上するなかで、長野県は82.9%でした。 【図4】は「JAFの調査で自県の停止率や順位を知っているか」という質問の回答です。これも長野市は顕著に認知度が高い結果となっています。この結果は長野の市民にとって「誇り」となっていることを暗示しているように考えられます。 無信号横断歩道で2時間ほど実際に停止状況を撮影しながら観察したところ、ドライバーが歩道にいる歩行者をよく見ていることや、横断歩道の手前で速度を落としている車両が多いことが確認できました。■長野市に行ってきました この研究は「JSPS科研費JP20K04735」の助成により実施しており、福井大学の川本教授、国士舘大学の寺内教授と共同で取組んでいます。このメンバーに、川本先生とともに福井県での交通安全対策に取組んでいるJAF福井支部の職員を加えた4名で長野市を訪れ、市内の無信号横断歩道を観察するとともに市役所や県警本部でヒアリング調査をしてきました。印象的だったお話を以下にまとめました。■歩行者優先運転を文化として定着 させたい! 長野の例は非常に参考になると感じました。過去にテレビの報道番組で「長野では昔から子供たちが横断歩道を渡り終えた後、ドライバーに向かってお辞儀している」という慣習が紹介されたことがありました。現在では豊田市はじめ多くの都市でこの「ありがとう」の運動が実施されています。 本稿では研究の一部を紹介しました。これら調査結果を踏まえて、より効果的な歩行者優先施策について、取りまとめていく予定です。歩行者優先社会の醸成を目指す〜長野県はなぜ  「止まる」のか〜主幹研究員・次長 山崎 基浩研究員報告

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