障がい者支援も視野に活動5つの指標です。 【表1】は、コロナ禍前(2019年12月以前)とコロナ禍(2022年10月)における、各市民活動の参加頻度の関係を示しています。表中の値は、コロナ禍前後での当該頻度の該当割合です。対角線上のセルの値が1に近いほどコロナ禍前後で当該頻度が変わっていないことを意味します。対角線より上にあるセルの値が0より大きい場合、当該活動の頻度が減少していることを意味し、下の場合は頻度が増えていることを意味します。これをみると、いずれの活動も減少傾向が見受けられますが、ボランティア活動、趣味活動は全体的に少しずつ頻度が減少していることがわかります。スポーツ活動や学習活動では、高頻度に活動をされていたのに、全く活動をしなくなってしまった方々が散見されます。他方で、特技・経験伝承活動は、活動が増加している方々も見受けられます。 このコロナ禍前後での市民活動の変化はどのような方々において特徴的なのでしょうか。【図1】は、市民参加の各活動量をSaito, et al4)に則りソーシャル・キャピタルとして数値化し、コロナ禍前後の増減によりグループ化したなかで個人の居住する都市、性別、年齢別の結果を示しています。全般的に「変わらない」という回答が多くみられますが、都市別では、やや豊橋市、岡崎市に居住する方で市民活動が減少したと回答した方が多いことがわかります。性別の差はあまりみられず、年齢別では、とくに29歳以下で市民活動が増えたと回答した方が多くいました。さらに、現状の健康状態に不安があるほど市民活動が減少している一方、ストレスを感じていると市民活動が■■■■■■■■■■■■■■図1/属性別の市民活動の変化コロナ禍中は83〜85で、今年(2022年)については101(コロナ禍前比+1%の微増)との回答でした。 「運営者」は、「戻ってきた(数は揃った)」様ですが、「人を集めて」の支援活動はまだ厳しいという状況が読み取れます。 ここから、回答のあった活動分野により、6つのグループに分類し、回答結果の詳細な分析を試みます。 グループの分け方は以下の通りです。A.「こども」分野:こどもの健全育成が主なテーマこどもの健全育成と高齢者支援B.「高齢者」分野:高齢者の生活支援が主なテーマC.「こども・高齢者」分野:D.「子育て」分野:子育て支援が主なテーマE.「+障がい者」分野:F.「その他」:福祉よりは環境保全・地域安全A.「こども」分野では、「三密」を回避する為、従来のイベントを廃止する代わりに、新しいものを生み出し、つないでいる団体があります。B.「高齢者」分野についても、同様に新しい事業を立ち上げています。C.「こども・高齢者」分野も同様の傾向にあります。 一方で、D.「子育て」分野では、コロナ禍中もコロナ禍前と同じレベルで事業を継続しています。E.「+障がい者」分野も、中断をせず、事業を継続しています。 特徴的なのは、F.「その他」の分野であり、対象4団体に対して2つ団体は、コロナ禍中は完全に活動を「中止」したのに対して、2つの団体は、コロナ禍を契機に、新しく団体を立ち上げ、事業を開始しています。 「NPOの活動」の原動力は「ほおっておけない」である事を考えれば、活動の萎縮により「従来の支援を受けられなくなっている」「支援の網からこぼれ落ちてしまった人」の為に、新しい活動が生まれるというのは正常な動きだと感じます。 少なくとも、コロナ禍を契機に新しく団体を立ち上げた2つは、そのように感じたようです。 市民活動の実態を把握するにあたり、本稿では令和4年11月に実施した意識調査結果を用います。対象者は、愛知県内政令市、中核市に在住する15歳以上の調査会社登録モニター(n=1,089)です。報告するいくつかの結果では、回答母集団の歪みを考慮し、拡大係数による調整を行った結果を用います。 本研究で用いる市民活動は、日本福祉大学にて開発されたソーシャル・キャピタルの計測指標として使用されているもの3)を使用します。具体的には、「ボランティア・グループに参加する頻度」「特技や経験を他者に伝える活動に参加する頻度」などの■■■■(N=1975005)■■■(N=623137)■■■(N=322461)■■■(N=324654)■■■(N=359396)■■(N=1787889)■■(N=1816764)29■■■(N=653556)30-64■(N=1967942)65■■■(N=983155)■■■■■■■(N=529073)■■■■■■■■(N=924135)■■■■■■■■■(N=1033609)■■■■■■■(N=850735)■■■■■■■■(N=267100)■■■■(N=313802)■■■■■■■(N=692219)■■■■■■■■■(N=749995)■■■■■(N=1342341)■■■(N=506296)0%40%■■■■■■■■■■■20%60%80%100%■コロナ禍後の市民生活支援 しかし、アンケート回答の中に「気になる点」を見る事もできます。アンケートの中で「アフターコロナ禍の将来的に活動はどうありたいか?」を問いています。結果、多くの団体で、事業規模(参加者数)はコロナ禍前の88%(▲12%)とコロナ禍前のレベルには戻せない(戻さない)と回答をしています。他方、運営者側の人数を、コロナ禍前622人に対して将来的には738人へ、「+19%」も「増やしたい」と回答をしています。 「コロナ禍」を経験し、「コロナ禍前の活動を見直す機会」を得て、個々の団体の「実力」に見合った「活動」の答えが1割程度の縮小という事なのでしょうか。それとも、これが「新しい市民活動の形」なのでしょうか。 「ほおっておけない」と「感じる者」は集い、先に述べた「F.その他」の新しい団体の様に「欠けた穴」を埋めてくれるのでしょうか。ただ何もせず、その「穴」は埋まってはくれません。コロナ禍前が「必要十分」ではなく「過剰」であった可能性はあります。1割程度の縮小で「適正」になったという考え方もあります。 ただし、「急激」な変化は別の問題を生むことから、誰も望んではいません。ソフトランディングになる様に、これまで以上に、積極的に、作為的に「新しい力を生み出す」刺激策が求められると感じます。
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