まちと交通 2023年5月 83号
1/6

2023年5月83号いていて、損益分岐点を定めてそれを上回る利益は、企業と自治体で分け合うことを検討中である。タクシーに比べたら安いので遠慮なく移動時刻をずらして相乗りしてもらっており、一台二人の利用率が達成できている。効率性ではなく幸福性を実現し、総所要時間の最小化ではなく輸送可能人数の最大化を追求することで、そこそこ便利な交通環境を実現している。 これらのストック活用型のオンデマンドサービスは、新たなストック確保は不要で、利用者にとって便利で利用者が増加し、事業者の収益も増加する可能性が高い。既存ストックが存在する地域の多くで、検討に値するものと考える。注.高萩市「MyRideのるる」の情報は、高萩市の公開情報による。また、TAKUZOの情報は2023年2月28日の「ナショナルミニマム不在の医療・交通」における森山昌幸氏の発表による。 近年のオンデマンドサービスの工夫は、いつでもどこでも移動できるという機動性の高い公共交通サービスを実現させている。機動性の高さは、従来の定時定路線バスにはない特筆すべき長所であり、暮らしを支える新しい交通サービスに欠かせない特性である。ここでは、定時定路線バスやタクシーというストックが存在する地域において、需要の少ない時間帯にオンデマンドサービスを導入した事例に着目する。 例えば、高萩市の呼出型最適経路バス「MyRideのるる」は、定時定路線よりも効率的な運行を実現している。朝と夕方から夜は定時定路線運航し、昼間は、バス停96に仮想バス停141を加えた237バス停間のオンデマンド運行で、乗合いの場合はAIが最短経路を探索して決定、1乗車大人300円の運行である。利用したいときにバスを呼び出し、複数のバスの中から、各自のスケジュールに合ったバスを選ぶことができる。だれの呼出しもない場合は、バスは運行しない。 また、TAKUZOは、タクシーの存在する地域に対して、タクシー需要の少ない9時から16時の時間帯のタクシーを利用するストックビジネスで初期投資を抑えていて、月額3000円程度のサブスクの乗り放題サービスを提供する。導入事例での採算シミュレーションと導入後の実績から、タクシー運転手の追加収入目標額を満たす利用人数、利用回数、乗り合い率に近づ豊田都市交通研究所 副理事長兼所長原田 昇「2023年度研究成果報告会」開催●日時/7月4日(火) 13:30〜16:25●会場/豊田産業文化センター※詳細は近日WEB(https://www.ttri.or.jp)に掲載します。「まちべん」に参加しませんか<今後の予定>●日時/6月21日(水)、8月23日(水) いずれも18:00〜19:00●会場/「豊田都市交通研究所」(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中(https://www.ttri.or.jp/machiben/)お知らせ機動性の高い公共交通サービスコロナ禍における地域活動・市民活動の実態公益財団法人 豊田都市交通研究所特集

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る