まちと交通 2023年2月 82号
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①自転車の車道通行率を提示(社会的動機)②先週からの変化(改善)を提示(前進の監③改善が見られた場合「いいね!」を提示(報酬)果ですし、この結果をもたらしたメカニズム−例えば、当該整備では適正な車道通行を促すに至っていないケースが多い、そもそも整備前後で自転車交通量に大きな変化があった、など−の理解が重要であるため、今後のさらなる分析の必要性は高いと考え視)有意水準推定値1.780.33-0.58-0.050.32-0.080.02-0.05-1.11-0.08-0.10********742.160.17372240*(Intercept)車道延長(km)最左車線+路肩(m)歩道幅員(m)車線数(車線)バス停数(箇所)車との交差箇所数(箇所)名古屋市ダミー(名古屋市=1)豊田市ダミー(豊田市=1)車道混在ダミー(整備後=1)自転車専用通行帯ダミー(整備後=1)AIC疑似決定係数事故件数(件/年)データ数***:P<0.001、 **:p<0.01、 *:p<0.05表1/自転車関連事故(第一もしくは第二当事者が自転車)件数の推定モデル図2/自転車の車道通行を促すための提示看板車道通行率提示看板命令情報提示看板(命令)用通行帯、自転車歩行者道、歩道における自転車通行位置の明示のいずれもが整備前後で自転車関連事故が減少したとの報告がなされています。ただ、残念ながら、本整理では車道混在にかかる言及はなされていません。そこで、当研究所では、愛知県内で自転車ネットワーク計画を策定している名古屋市、豊田市、豊橋市、安城市の自転車通行空間を対象に、当該通行空間の整備が自転車関連事故にどの程度影響を与えているのかを分析しました。2012年から2019年の8年間分の事故を対象とし、道路構造等の影響が予想された変数を組み込んだ自転車関連事故を推定するモデル(ゼロ過剰ポワソン回帰モデル)を構築しました。【表1】に結果を示します。これによると、自転車通行空間(最左車線+路肩)が広いこと、車線が少ないこと、車との交差箇所が少ないことが自転車関連事故を有意に減らす要因となっています。他方で、車道混在の整備は事故数の削減(符号がマイナス)に寄与しているものの、統計的に有意でなく、車道混在の整備のみでは自転車関連事故の削減効果があるとまではいえないことが示唆されてます。この結果は限られたデータでの結ます。しかし少なくとも、十分な自転車通行空間の広さが確保されないなかで車道混在の整備を暫定形態ですすめることは、「自転車の安全性を速やかに向上させる」という観点に限れば限界があるかもしれないことを踏まえておくべきではないでしょうか。「自転車は車道が原則 歩道は走らないで」という命令情報を提示 人の行動変容を促す方法としては、交通計画の分野でも交通需要マネジメント(以下、TDM)やモビリティ・マネジメント(以下、MM)をはじめ、さまざまな取り組みがなされてきています。当研究所では、特にMMの基礎的概念でもある人間の「動機」の性質に着眼した研究を進めています。例えば、認知神経科学者のTali Sha-rotは、世界的に著名な講演会であるTED4)にて、人に行動の動機を与えるに際して、以下のポイントが重要であると指摘しています。自転車通行空間の利用を促す

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