図1/利用意向影響要因の違いの分析結果に対する解釈(1)インタビュー調査結果 65才以上の高齢者15名を対象としたインタビュー調査を通じて、主な知見は次の通りです。先進的自動車保険の利用を通じて、運転行動の改善効果がある回答者は多数です。先進的自動車保険の課題としては、保険料が高すぎること、記録映像の確認が不便であること、情報提供の必要性、ドラレコのレンタル費用などが指摘されます。先進的自動車保険の利用によって、運転寿命延長効果があると思う方は一部だけです。また、インタビュー調査による先進的自動車保険の変更目的、利用1,000名を対象としたWEBアンケートを実施しました。そのうち、テレマティクス保険の優良運転者の最大値引きやドラレコ特約付き保険の長期利用者の値引き有無による影響を把握するため、六つの仮想状況で契約意向を回答して頂きました。そして、回答結果に適用できる多項ロジットモデルの構築を通じて、保険利用意向に影響を及ぼす要因を明らかにし、高齢者と若者の違いを分析しました。 方策検討では、インタビュー調査結果やアンケート調査結果を踏まえ、先進的自動車保険の活用方法、損害保険会社のPR方法、および、先進的自動車保険の利用促進に向けた方策を提案しました。(2)アンケート調査結果 65才以上の高齢者及び35才未満の若者を対象としたアンケート結果に適用できる多項ロジットモデルを構築しました。構築したモデルを用いて、「テレマティクス保険を契約」、「ドラレコ特約付き保険を契約」、「どちらでも契約せず」の選択プロセスが表現できるようになりました。また、各選択肢に関する説明変数の有意性から、先進的自動車保険の利用意向に影響を及ぼす要因を把握しました。そして、高齢者、若者それぞれのサンプルデータに適用した推定結果を踏まえ、利用意向影響要因の違いを分析しました。なお、利用意向影響要因の違いの分析結果に対する解釈を【図1】に示します。この分析結果から、先進的自動車保険を比較的受け入れやすい高齢者の特性が分かりました。これらの研究知見を踏まえ、損害保険会社が先進的自動車保険の契約が見込まれる高齢者層をターゲットとした販売戦略は効果的と考えられます。(3)調査結果を踏まえた方策提案 インタビューやアンケート調査結果を踏まえた方策提案の内容を【図2】に整理します。高齢者を対象とした安全運転の確保に向けた方策を検討することを念頭に置き、テレマティクス保険やドラレコ特約付き効果、懸念事項を【表1】に整理します。 最新動向の整理では、インタビューやアンケート調査内容を検討するため、国内の損害保険会社の販売しているテレマティクス保険の現状を整理するとともに、比較対象として、各保険会社の販売しているドラレコ特約付き保険の現状も整理しました。そして、欧米諸国の先進事例の情報収集を行うとともに、現段階では国内の先進的自動車保険に関する研究文献を整理することで、インタビューやアンケートの質問を設定しました。 保険利用者を対象としたインタビュー調査では、先進的自動車保険の利用が運転行動の改善につなげる効果の有無、保険利用に関する課題、当該保険が高齢者の運転寿命を延ばす可能性等を把握しました。調査方法としては、WEBアンケート調査会社を通じて募集した高齢者15名を対象に、電話でヒアリング調査を実施しました。調査内容はスクリーニング用の調査結果に関する内容確認に加えて、運転頻度、1日の走行距離、運転寿命延長効果の有無などです。その結果から、利用者側からみた課題・期待内容等を整理しました。 保険非利用者を対象としたアンケート調査では、自動車の利用状況、契約中の自動車保険、運転能力及びその評価、先進的自動車保険の認知度・利用意向などを把握しました。調査方法としては、65才以上の高齢者、35才未満の若者それぞれる方、位置情報提供に対する強い抵抗感がない方、男性〇テレマティクス保険を契約する高齢者の特性→ADASの装備、保険料節約意識がある方、テレマティクス保険のみを知っている方〇ドラレコ特約付き保険を契約する高齢者の特性→前方ドラレコの装備、ドラレコ特約付き保険のみを知っている方〇自動車保険契約意向について、若者と比較した高齢者の特徴→先進的自動車保険:事故経験がない方、先進的自動車保険両方とも知っている方→テレマティクス保険:テレマティクス保険のみを知っている方→ドラレコ特約付き保険:前方ドラレコの装備〇保険料値引きによる契約意向の変化要因→テレマティクス保険:優良運転者に対する最大20%値引き、最大30%値引き→ドラレコ特約付き保険:長期利用者に対する5%値引き〇何れかの先進的自動車保険を契約する高齢者の特性→大手損害保険会社契約者、事故経験がない方、運転行動を積極的に把握したい方、先進的自動車保険両方とも知ってい
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