まちと交通 2022年8月 80号
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特集表1/先進的自動車保険の変更目的、利用効果、懸念事項(赤文字:多数回答)(2)研究目的 令和3年度における筆者担当の自主研究では、テレマティクス保険の社会受容性を把握することや社会展開に向けた方策を検討するため、高齢者を含む運転者を対象に、インタビューやアンケート調査を実施しました。今回の特集では、研究所自主研究の内容及び成果の一部を報告します。なお、研究成果報告書の本文は当研究所のホームページに掲載されています。(3)研究特徴 本研究の特徴は次の3点です。1点目、テレマティクス保険に加えて、ドラレコ特約付き保険も研究内容とする点です。その理由は、情報通信技術を活用したドラレコ特約付き保険は運転診断結果を提供できるとともに、運転支援アラートが発出できることで、テレマティクス保険との競合関係が存在すると考えられます。2点目、先進的自負担がある中で高齢運転者が該当保険を契約するかどうかは不明確です。動車保険の受容性を把握するため、インタビュー調査とアンケート調査を実施する点です。該当保険の利用者(高齢者のみ)を対象としたインタビュー調査では、運転行動の改善効果、問題点、期待内容を把握し、非利用者(高齢者・若者)を対象としたアンケート調査では、保険種類別の認知度及び利用意向等を把握します。3点目、アンケート回答者の選択行動が表現できる行動分析モデルを構築することで、保険の利用意向に影響を及ぼす要因を分析する点です。特に、保険の認知度、位置情報提供に対する抵抗感などの要因の影響効果を明らかにした上、高齢者と若者の差異があるかを確認します。 本研究では、「最新動向の整理」、「インタビューやアンケート調査の企画・実施・分析」、「方策検討」の三本柱で研究を推進してきました。研究内容に対する説明は次の通りです。ドラレコ特約付き保険利用者:10名(1)研究背景 近年、交通事故防止に繋げようとして、先進的情報通信技術を活用したテレマティクス自動車保険(以降、テレマティクス保険と称する)が開発、販売されました。該当保険商品の多数はドラレコを搭載せず、利用者の走行距離や運転行動によって、保険料を変化させるものです。このような自動車保険を活用することで、損害保険会社から運転診断レポートが取得できる高齢者が運転能力を自覚することから、高齢運転者のより一層の安全運転が確保できるなどの効果が予想されます。今、大きな社会問題となっている高齢運転者による交通事故の予防対策になるのではないかとの議論が行われています。一方で、該当自動車保険はおもに大手損害保険会社が販売しているため、格安自動車保険の利用者は契約先を変更しない限り、該当保険を利用できません。このような経済的な研究部主席研究員 楊 甲〇保険料の削減:3名〇安全意識の向上:3名〇運転行動の改善:4名調査項目変更目的利用効果懸念事項テレマティクス保険利用者:5名〇運転能力の自己把握:2名〇安全運転意識の向上:4名〇保険料の削減:5名〇プライバシー(位置情報等)侵害可能性:1名〇運転診断レポート結果の信頼性:2名〇運転行動による保険料の上昇可能性:1名〇運転能力の自己把握:5名〇安全運転意識の向上:7名〇ドラレコによる運転支援アラートが必要:1名〇ドラレコによる交通事故発生時の記録:9名〇ドラレコによるあおり運転等の危険な運転対策:3名〇プライバシー(位置情報等)侵害可能性:0名〇運転診断レポート結果の信頼性:5名〇安全意識の向上:8名〇運転行動の改善:7名〇燃費の向上:2名高齢運転者を対象とした  テレマティクス自動車保険の   社会受容性に関する実証的研究

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