まちと交通 2003年11月 8号
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特集 所長就任記念講演会Feature Articles TTRI Letter №8 7 表1 都市交通政策の体系 都市交通政策の体系を表1にまとめてあります。今申し上げました需要サイドの都市活動に関わるもの、供給サイドの交通システムに関わるもの、それから仕組み・制度のフレームワークに関わるもの、実はそれぞれにいろいろな政策の要素、選択肢があります。 表1には、供給サイドの2段目には多少時間や費用のかかること、長期的なものを入れております。まず交通インフラ整備。道路や鉄道を造ることは大変お金も時間もかかりますが、それだけではもう難しいことがわかってきました。それから、もう一つは技術開発。これは交通にとって、特に環境問題にとっては一番重要な視点かと思います。トヨタ自動車さんが正に一番得意とすることだと思っておりますが、EV車や燃料電池車といった低公害車の開発や汚染の問題となるようなディーゼル車の環境性能をできるだけ高めたもの、あるいは新しいものに変える技術開発をしていただく。そして、それをサポートするITS技術。そのような技術開発がベースになれば、インフラも当然インテリジェントなインフラを整備してほしいということになります。インテリジェントなインフラが整備されれば、それがまたベースになります。 それに対して、できたインフラや車を上手く使うことは短期的な施策です。長期的なインフラのもとで、社会にとって一番いい使い方をするにはどうしたらいいかということです。日本では、交通管理、運用については、交通信号や一方通行などの交通規制や交通管理として警察が分担しておりますが、それにあわせて代替交通整備や交通情報案内などが供給サイドでは必要です。 一方、需要サイドについては交通需要マネジメントですが、これには、交通をするという場合できるだけ問題のない形で車から他のものに移っていただくモーダルシフトや渋滞のピークを分散していただく、あるいは積載率を上げていただく、またはロード・プライシング、それから移動しなければならなくなったときの仕方を変えていただくというような少し間接的なものが含まれます。 都市計画では成長管理という考え方で、各々の需要を発生段階からできるだけ少なくしていく。在来市街地から遠いところに団地をばらばらと造るのではなく、職住近接というようにもっとまとまった、コンパクトな市街地を造っていただく。それが非常に重要視されるようになってきていると思います。また、地域計画では、東京のような問題を例に挙げますと、東京の中だけではどうしようもないので国土全体の中で考えていただく。 それから、アクティビティ・マネジメントという言い方ができるかと思いますが、オフピーク通勤やテレワークなど、就労・労働・社会政策に関して、生活の仕方のベースや産業・ビジネスの立地からその仕方そのものに関しても、交通という面から初めから注文をつけなければ、後から対処できにくいという状況が私の認識であります。 それを変えていく新しい仕組みとしては、基本的には社会的費用の内部化。特に環境問題では、様々な排出ガス規制、また新しい開発については、環境アセスメントと同じように交通に関して事前にチェックするという方法もあります。イギリスではショッピングセンターの開発の場合などには、必ず徒歩でも自転車でも来られるようなサービスを付けることが条件になっております。またバスがなければ、最寄りの駅、あるいは都心からバスを無料で10年間走らせるといったことが、開発許可の条件になっているところもあります。日本でも、このような交通アセスメントについて多少勉強しましたが、法制度化は難しいということで、大規模な開発について指導しているのが現状かと思います。しかし、私は非常に重要なテーマだろうと思っています。
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