まちと交通 2003年11月 8号
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財団法人 豊田都市交通研究所 所長 太田勝敏 (東洋大学教授・東京大学名誉教授)持続可能性のある都市と交通まちづくり特集 所長就任記念講演会Feature ArticlesTTRI Letter №8 3 【 研究所とその役割 】◆地方都市の交通について実践的な研究 を進める◆研究所の3本柱: ①交通とまちづくり ②交通モデル都市 ③全国・世界への情報発信◆当面の主要研究分野 -ITS,公共交通,交通安全,TDM◆新たな取り組み -大学等との協働の強化1.はじめに どうもみなさん、こんにちは。お忙しいなか、お集まりいただきましてありがとうございます。 今日は、私の所長として初めての講演となりますが、これまでも企画運営などを通し、研究所と一緒に活動させていただきましたなかで、何回かお話をする機会があったかと思います。改めて、この機会に研究所の活動を紹介させていただくとともに、私がどのような考え方で交通問題、あるいは都市問題を見ているかということをお話しさせていただきたいと思います。多少私見にわたることがありますので、必ずしも研究所としての方針というわけではありません。これについては、所員の方々や市民の皆様と相談しながら進めていくことになろうかと思いますが、せっかくの機会ですので私の基本的な考え方を紹介したいと思っております。 2.(財)豊田都市交通研究所とその役割 豊田都市交通研究所の特徴、研究状況については、先ほど理事長から紹介がありましたが、私の方からも多少追加させていただきます。設立からすでに12年経っておりますが、新谷洋二先生、加藤晃先生をはじめ多くの大学の先生方に大変ご協力いただき、理事長を豊田市長にお願いし、専任の研究員に加えてトヨタ自動車(株)、市役所、また一時県からも所員を出向していただくという形で今まで研究を続けてきております。 私はこの研究所を全国的に見てもユニークな研究所と考えております。ひとつの自治体が主体となって、都市交通の問題を本格的に研究する機関として創り上げるというのは、私の知る限りでは日本でここだけではないかと思っております。それから、ここにはトヨタ自動車があります。車のまちです。交通のベースになる基本的なノウハウを持つ企業のお膝元で、その企業の参加を得ながら一緒に活動できる環境にある。具体的には、世界でも最も進んだ環境自動車を創り上げているトヨタ自動車のいい車があり、豊田市をはじめ自治体や県、国という行政機関がそれを上手く使えるようないいインフラをあわせて計画、整備することが可能な環境にあるということです。そして最後に、一番重要なのはそれを使う消費者としての市民の皆さんや車を使う商店街の皆さん、企業の皆さんがいる。このような交通政策に関係する三つの主体が揃う環境、現場があるということが、ここにこの研究所ができた一つの大きな意義だろうと思います。従って、国際的に見てもそこに求められていることは、自動車交通に様々な社会的課題があるとすれば、それに対して如何に答えられるか、その解決策を示せるかということです。世界においてもモータリゼーションが進んでおりますので、それに対して回答を示すような責任も、ある意味であるのではないかとも思っております。 そのような中で、都市交通研究所という形で設立された我々の使命の一つは、世界に向けて車のいいところを伸ばし、車の問題点を克服して、新しい車社会と言えるような車の使い方を世界に示す役割を担うことではないかと思っております。私はそういうスタンスで、豊田都市交通研究所の所長をお引き受けしたつもりです。 また、東京にではなく、地方都市にこのような研究所があることから、あくまでも地方都市の現実を踏まえた都市交通のあり方について実践的な研究を進めることが、大きな特色、特徴であると思っております。 研究所三本柱の一つとして、交通とまちづくりを掲げております。広い意味で都市交通の問題全体を扱う、しかもそれを地方都市という立場で扱うということは交通とまちづくりが重要になります。これを一体として扱うことが一番重要なテーマと思っております。 二つ目の柱として、交通モデル都市の推進。豊田市をベースに今申し上げました形での新しい車と都市、あるいはその他の交通機関のあり方を実践的に示すということも一つの大きな研究分野であろうと思っております。
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