まちと交通 2003年11月 8号
15/23
特集 所長就任記念講演会質疑応答Feature Articles14 TTRI Letter №8 ービスするために、委託契約、あるいは入札制などいろいろな形で工夫をしているわけです。 自治体の皆さんは、規制緩和によってバスがどんどん撤退する中で、自分の問題として解決しなければならないという場面をつきつけられて、今苦悩しているところだろうと思います。ですから、この経験の中で、次第にそういった行政的取り組みが出て来ると期待しておりますし、当然現在の地方分権の中でも是非議論していただいて、そのための財源も委譲して欲しい。私もどこかで書きましたが、国道についても既に出来上がって、地方に使われているものは国道を降格して、その部分の整備やメンテナンスに財源をつけていただく。それをその都市その都市の優先順位の中で使うべきなのです。そうすると、実は使い方が変わってくるかと思います。そのようなことも含めて、仕組みも同時に変えて行かなければならないと思います。これは黙っているだけではとてもできないと思いますので、私としては、豊田市を含めていろいろな自治体が提案して、そして国を動かしていくことも必要ではないかと思います。 質問者Bさん: 豊田スタジアムでは、昨年は100万人以上多くの皆さんにご訪問いただき、今年も150万人くらいのお客様をこれから迎え入れていきたいと思っておりますが、当初の計画と現実の交通処理とでは随分乖離がありまして、非常に苦慮し質問者Aさん: 日本では今やっとバス路線のあり方を含め、公共モビリティをどうするという議論が、特に地方の都市ではされていると思うのですが、それに対して海外の事例を含めて、日本の現状を少し補足いただければ・・・。Ans.太田所長: 公共交通支援の面でかなり日本が遅れているとお話しましたが、ご存じの通り路線バスは規制緩和ということで、儲からないところはどんどん廃止していいという形で、ある意味で逆行と思われるようなことが進んでおります。つまり、そのベースになる自治体なり行政の方が、これまで公共交通を直接的な行政テーマと考えていないケースが多いということが問題です。 私どもが公共交通の問題を調べようと思って、自治体にアンケートを配ろうとしても宛先がわからないのです。道路整備課だったり、企画課というところがまだあればいいのですが、交通行政を担当する課がなかったり。これも縦割り行政の弊害の一つかと思いますが、道路を造る行政と、その道路の上を走る運輸産業の行政、それから交通警察という形で、交通管理や交通運用をする行政はありますが、移動するという視点でみる行政の単位はなかったのです。 ヨーロッパでは、車社会の進展で同じ問題を抱えて、結局公共交通がどんどん廃れてしまう、それでいいのかという議論の中で、やはり自治体として責任を持つべきという合意に至った。特に、フランスがその点では、新しい憲法になりますが、交通権という権利を基本的人権として認めて、それを担保するのは自治体であるということで、自治体にそのための権限と財源を与えたわけです。これは事業所交通税になりますが、企業の給与支払い額からある一定のパーセントを交通整備のために提供していただく、それを公共交通に使ってもいいし、道路整備に使ってもいいし、自治体が必要と思う交通に使えます。その中できちんと公共交通を整備する仕組みができたわけです。我々が非常に感心するいろいろなところにLRTができるのは、そのようなベースがあるからです。ですから、ヨーロッパでは'60年代まで大体バス等を民間が独立採算でやっておりましたが、この後はもう難しいということで、それをすべて公共が支援する。その中で効率的なサ
元のページ
../index.html#15