まちと交通 2003年11月 8号
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特集 所長就任記念講演会Feature ArticlesTTRI Letter №8 13 豊田市 若宮緑陰歩道豊田市 若宮緑陰歩道豊田市 若宮緑陰歩道 しかしながら、その中にも非常に質の高い、ユニークな空間があります。皆さん、ご存じの若宮の緑陰歩道というこの一角は、非常に落ち着いた、行くとゆったりとした気持ちになれる空間ではないかと思っております。このようないくつかの資産や財産もあります(Power Point 13,14)。非常によいデザインのものがありますが、それが繋がっていない、あるいは点でしか機能していないという問題があります。以前は、道沿いの水路に魚が放たれており、初めて来たときにはそれに感激したことがあります。かなり手入れをされているようで、いつも楽しませてもらっております。Power Point13Power Point14Power Point15 このような連続性の問題については(Power Point 15)、交通から考えますと、交通安全のこともありますが、交差点をもう少し一体的に使うデザインの仕方がいろいろあり得ると思います。 私としては、これからの豊田市を考える場合に、先ほど新しい都市再生として大変大規模な例をご紹介しましたが、もっと身近なところのアーバン・デザインといいますか、身の回りの道路のつくり方や広場のつくり方、あるいは歩道、自転車道など全体を見直していくということが一つの大きな話かと思います。生活・アメニティを優先した都市づくりということが豊田市のマスタープランの中にありますが、現在これを改訂中ということです。これから自動車だけでない都市をつくる場合に、道や公共空間のつくり方、あるいは公共空間の使い方に大変工夫の余地があるのではないかと思っております。豊田市の中には大変優れた建築が多数あります。しかし、それらは個別に、バラバラに設計され、繋がりがありません。これからの大きなテーマは、それらをネットワークで繋げる、あるいは面的に整備することだと思います。これは景観づくりということになりますが、特に中心部を如何に魅力づけするかというポイントの一つは、街路と周辺の一体的な景観をあるテーマをもってつくっていくということであり、それには緑や水を上手く取り込んでいくことだと思います。中心部の少し外には豊かな自然がまだ残っていますから、それと上手く繋げるような豊かな景観づくりというようなことも、私どもの大変重要なテーマかと思っております。研究所の中にはそういう能力が充分ありませんが、大きなテーマとして勉強していく課題ではないかと思います。 いろいろなテーマがありますが、まちづくりの課題と一体的に考える交通の問題がたくさんあるということです。これはそれほど解決不可能なものではないと思います。知恵はあると思います。特に自動車関係の知恵はこの地域に世界でも一番集まっていると思います。そこに研究所や大学研究者の知恵、それからお金と汗をあわせれば、進めていくことが可能ではないかと思います。汗という意味では市民の皆さんの協力が必要かと思います。 私としては、豊田のこれからの一番の大きな課題としては、心理学者マズローの欲求段階説で言うと、機能的な面ではかなり優れたものになってきました。次は、それを越えた質の高いもの、それは美しいとか、ゆとりがあるということになりますが、それを如何につくりあげていくかという段階になります。最終的には文化の問題だと思いますが、文化的な市街地をどうつくっていくか。これは行政だけではできません。みんなが協働してやっていくことだと思います。そういう意味での都市づくりに多少でもご支援できたら、私どもも幸せかと思っております。 一応、私の方の、かなり個人的な見解を含めてお話しておりますが、そのようなスタンスで豊田市というものを見て行きたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(おわり)
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