まちと交通 2003年11月 8号
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特集 所長就任記念講演会Feature Articles10  TTRI Letter №8 【 基本的課題と展望:豊田からの発信 】◆新たな戦略的アプローチの必要性  -従来型交通対策の限界と統合的アプローチ  -新しいライフスタイル・産業活動の仕方(循環型社会づくり)  -ターゲットとしての市民・企業・ビジター◆都市づくりの方向性(都市ビジョン)についての合意形成  -「交通モデル都市」の意味  -都市再生,都市再構築の動き(ロンドン,ソウル,ボストン等の事例)  -例:「安心して住み続けたいまち」  -機能の確保からより高い品質の都市へ(マズローの欲求段階説)   (誇り,うるおい,ゆとり,みどり,景観,・・・)  -アーバン・デザインの重要性   (豊かな空間 - パブリックスペースと美しい街)◆実現に向けたプロセス  -新しい仕組み(行政改革・地方分権化,公共交通の規制緩和の下で)  -すべてのステークホルダー(利害関係者)の参加,   企業・地域・コミュニティとの協働による取り組み,「交通まちづくり」 アプローチを進めたらいいかが大きな課題になるであろうと思います。 この場合のターゲットとして市民、企業、それにビジターを加えて考えております。都市の交通を考えるに、私どもは忘れがちですが、そこ住んでいる、あるいは働いている人だけではなくて、大変多くのビジター、来訪者がおります。観光客ということだけではありません。いろいろなイベント施設もありますので、そこへ来られる方々、あるいは学会その他で訪れる方々、外からの来訪者はたくさんおります。その人達が豊田市、あるいはこのような都市に来て、これが車のまちの新しい姿かとわかっていただけるような、あるいはある種の感動を覚えるような姿を如何に提示できるかという視点でビジターというものを見てほしいということであります。そういう人達がまたリピーターとなって、訪れていただけるようなまちづくりが一つの視点ではないかと思います。 それから、都市づくりの方向性(都市ビジョン)についての合意形成として、私どもは交通モデル都市ということの議論をしております。また先ほど市長さんから環境型交通都市というようなご提案もありましたが、交通というものを新しい姿で示す様々な動きが出てきております。 最近私が少し驚き、感激したプロジェクトの例がありますので、ご紹介させていただきたいと思います。ごく最近新聞でご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、韓国ソウルで、大変注目すべき大プロジェクトが動いております。 ソウル中心部を東西に流れる清渓川(チョンゲチョン)という川がありますが、片側4車線の高速道路で塞がれた形になっておりました。それを全部壊して昔の河川に戻そうという市長さんの公約で、7月1日から着工されたそうです。見ていただきますと(Power Point 1 ~3)、川の上をこのように高速道路が通っております。日本でも大都市にありそうな風景です。一応これをここまでに復元しようということになっています。 これはものすごい決断だろうと思います。少なくともお隣の国ではこのような形での議論が始まっております。議論というより実際に進められております。日本でも、東京におきまして日本橋の上を通る首都高の高架道路を地下におろしましょうとまじめに議論しております。ただその機会がいつかというといろいろな議論がありますが、少なくとも長期的にはあれを地下にして、日本橋を見られるようにしましょうという方向で東京都は考えております。しかし、ソウルでは実際にそれを着工したのが凄いところです。 その時の考え方は、パラダイム"人間・自然優先主義"となっておりますが(Power Point 4)、そのときの都市像として別のところを見ますと、ソウルは標語として"21世紀の文化環境都市"ということを掲げております。環境という言葉は多く言われておりますが、文化という言葉は私にとってある種の衝撃でした。次世代の環境がいいというだけではなく、環境を通してどのような文化を創っていくかが改めて重要かなと思った次第であります。

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