コロナ禍により交通量の減少はみられるものの、場所によっては道路混雑はなおも発生している2022年5月79号 交通事故削減に関しては、我が国においても不断の努力が続けられ、事故率が低下し、Vision Zeroが政策課題となり、通学路Vison Zeroが展開されている。我が国の2019年の人口10万人当たりの交通事故死者数は3.1に低下したが、スウェーデンの2.2よりは大きく、特に歩行中の死者数が多い。 一方、アメリカでは、道路交通が減少する中で死亡事故が増大している課題に対応するため、セーフシステムアプローチ(S-SA)への関心が高まり、2021年11月に成立した連邦法において、地方自治体に対してVision Zero の実現を助けるa Safe Streetプログラムが新設された。また、同時期、2021年10月に改訂された、国連の道路交通安全10年計画においては、SSAが明確に提示された。 SSAとは、スウェーデンで1997年に提案されたVision Zeroの原則を具現化するアプローチである。SSAは、スウェーデンやオランダなどにおいて20年以上の積み重ねがあり、死亡事故を大幅に減らしてきた。2019年に交通事故による歩行者死亡事故数ゼロを達成したヘルキンシ市は、SSAの成功事例である。 ITEは、「SSAとは、死亡事故と重傷事故を減らすことを目標として、車両とインフラストラクチャの設計と運用によって、人的エラーとそれに伴う人的障害を許容範囲に収めるようにするアプローチ」としている。TRB2022のWS1003では、その特徴は、①交通事故全般ではなく、死亡事故と後遺症が残るような重傷事故を防ぐ、②人の行動改善ではなく、人のミスや限界を前提に設計する、③速度ではなく、衝突の際の物理的な力を制御する、④事故の責任を個人ではなく、関係者全員でシェアする、⑤事故記録に基づく対策ではなく、事故の起きるリスクを事前に特定し対策を打つ、⑥交通安全の「四つのE」ではなく、Safe systemの五要素(Safe road users, Safe vehicles, Safe speeds, Safe roads, Post-crash care)で考える、のパラダイムシフトにあるとの指摘があった。 わが国においても、人のミスを前提とし、車と人の衝突時の衝撃を、死亡や後遺症の残る重傷に至らない許容範囲に抑えるために、利用者の空間的・時間的分離と速度制限、特に、効果が実証されているラウンドアバウトや狭窄とスムース横断歩道の組合せの導入を進めること、市域全体の30km速度制限を含むSafe system五要素の適用方法を検討することが肝要である。(公財)豊田都市交通研究所 副理事長兼所長原田 昇「2022年度研究成果報告会」開催●日時/7月5日(火) 13:30〜16:25●会場/豊田産業文化センター※詳細は近日WEB(https://www.ttri.or.jp)に掲載します。「まちべん」に参加しませんか<今後の予定> ●日時/5月18日(水)、6月15日(水)、8月17日(水) いずれも18:00〜19:00●会場/「豊田都市交通研究所」(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中(https://www.ttri.or.jp/machiben/)お知らせ交通事故政策のパラダイムシフト〜Vision Zeroの実現に向けて〜公益財団法人 豊田都市交通研究所
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