四季折々コラム7274767880828486887274767880828486889092図/2019年1月時点の中核市の平均寿命と健康寿命273号●発行/(公財)豊田都市交通研究所 ●発行人/専務理事 今枝 真一●発行年月日/2020年11月15日 ●編集/松本 宏克●お問合せ/〒471-0024 愛知県豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F TEL.0565-31-8551 FAX.0566-31-9888 URL https://www.ttri.or.jp/ 徒然草 第38段 にあります。 「名誉や利益に使役されて、心を静かに穏やかに保つ時間もなく、一生を苦しむのは愚かである。」という意味です。 以下、「よくよく考えてみれば、名誉を欲するということは、世間の評判を求めているだけのことである。自分を褒める人もけなす人も、共にいつかはこの世からいなくなってしまう。自分の評判を伝え聞いていた人も、また遠からずこの世を去ってしまい自分の名誉も消え去ってしまう。」と続きます。 「一病息災」(一つぐらい具合の悪いところがあった人のほうが、健康に気をつけるので、長生きをするという意)と心得る吾が身には、「限られた命」を感じられるからこそ、生を大切にし、命の無常さを知り、兼好法師の死生観を実感できるのです。名利(みょうり)に使はれて、閑か(しずか)なる暇(いとま)なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ企画管理部主幹 松本 宏克研究部研究員 鈴木 雄健康寿命研究員報告 「健康寿命」という言葉を聞いたことがあるかと思います。健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義されています。つまり、元気に過ごせる期間といえます。2000年にWHO(世界保健機関)が健康寿命を提唱して以来、寿命を延伸するだけでなく、いかに健康に生活できる期間を延ばすかに関心が高まっています。健康寿命と平均寿命の差が広がった場合、健康面だけでなく、医療費の増大や介護の拡大など、さまざまな問題が考えられます。日本では、寝たきりの期間が欧米諸国よりも長いといわれています。 健康寿命を延ばすためには、どうしたらよいのでしょうか?筋トレなど身体の強化をすればよいと考える人もいるかもしれませんが、それだけでは十分ではありません。健康寿命の延伸のためには、「外出」と「交流」が重要とされています。例えば、既存の研究では「高齢者で2~3日に1回未満の外出の場合、30か月後の要介護の発生は3.4倍1)」、「週1回以上、趣味やスポーツの会に参加した高齢者はその後11年間の介護費が30~50万円低い2)」、「社会参加する高齢者は9年後の要介護リスクが0.8倍に、死亡リスクが0.9倍になる3)」などと言われています。コロナ禍において、外出を自粛されている高齢者の方もたくさんいらっしゃるかと思います。ウイルスへの感染リスクを下げることはもちろん重要ではありますが、外出しないことや、人と会話や交流をしないことによる健康への影響にも留意しなくてはいけません。密にならない場所や時間に外出すること、ウイルスに感染しない工夫をしながらなるべく多くの会話や交流をすることをお勧めします。 さて、豊田市の健康寿命の現状はどうでしょうか?厚生労働科学研究の開発した健康寿命の算定プログラムを用いて、健康寿命および平均寿命の算定を行いました。今回は、日常生活動作が自立している期間の平均を算定しています(1)。比較のために、全国の中核市も同様に算定しました。その結果をグラフに示します。算定の結果、豊田市の平均寿命は男性が82.4歳、女性が87.5歳となっています。一方、健康寿命は男性が81.0歳、女性が84.6歳となっています。グラフをみると、平均寿命や健康寿命は都市により差があります。この差は何によるものでしょうか?私は都市や交通の要因による影響も大きいと予測しています。例えば、都市の要因として図書館や美術館、高齢者サロンなど施設の数が考えられます。また、交通の要因として、バス停の数やバス路線の長さ、高齢者のためのバス運賃割引施策などが考えられます。自家用車を長い期間安全に使える環境ももしかしたら健康寿命の延伸に寄与しているかもしれません。私は、これらの健康寿命に寄与する要因について明らかにしていきたいと考えております。1)渡辺美鈴、渡辺丈眞、松浦尊麿、河村圭子、河野公一:自立生活の在宅高齢者の閉じこもりによる要介護の発生状況について、日本老年医学会雑誌、Vol.42 No.1 pp.99-105,2005.2)Saito Masashige, Aida Jun, Kondo Naoki, Saito Junko, Kato Hirotaka, Yasuhiro Ota, Amemiya Airi, Kondo Katsunori: Reduced long-term care cost by social participation among older Japanese adult: A eleven-year follow-up study in JAGES. BMJ Open3)Takahashi S, Ojima T, Kondo K, et al. So-cial participation and the combination of future needs for long-term care and mor-tality among older Japanese people: a prospective cohort study from the Aichi Gerontological Evaluation Study.2019.(1)不健康割合の分子として要介護2~5の認定者数を使用。要介護認定者数は2018年12月末時点、人口は2019年1月1日時点、死亡数は2018年度のものを使用して算定
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