まちと交通 2020年11月 73号
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図2/農地転用件数の推移020040060080010001200図3/農地転用分布図(市街化調整区域のみ)11図1/土地利用メッシュ図の変遷00図4/農地転用推定値2研究所活動報告はじめに 高度経済成長期、日本は人口の増加、モータリゼーションの発達等によって、市街地が徐々に拡大しました。しかし、人口減少社会となった現在では、市街地の拡大は、中心市街地の空洞化や財政負担の増加等、様々な問題を深刻化させる要因の一つとなります。本研究では、農地転用データを用いて、豊田市の郊外開発の状況や郊外部で開発されやすい地域について分析しましたので、その一部をご報告致します。市街化調整区域の土地利用推移 はじめに、市街化調整区域の土地利用の推移をみてみます。市街化調整区域とは「市街化を抑制すべき区域」として設定されていることから、原則として開発行為を行われず、農地や森林を守る地域となっています。しかし、土地利用メッシュ図の変遷【図1】をみると、特に南部の市街化調整区域において、「田」が「建物用地」に転換しており、郊外化が進んでいることが分かります。農地転用の状況整理 本研究で用いる農地転用とは、農地を農地以外の土地にすることであり、市街化区域で農地転用を行う場合は農地転用届出、市街化調整区域で農地転用を行う場合は農地転用許可を提出する必要があります。 豊田市の農地転用動向について、【図2】に農地転用件数の推移、【図3】に農地転用の分布図(市街化調整区域のみ)を示します。市街化調整区域での農地転用に必要な農地転用許可の件数をみると、2009年以降は年間600件から800件で横ばいに推移しています。農地転用分布図をみると、豊田市の南部や鉄道路線沿い、国道・県道沿いで農地転用が集まっていることが分かります。農地転用が起きやすい地域 次に、現在の都市の状況(農地の分布状況や市街地までの距離、都市施設までの距離など)から農地転用に影響を与えている要因について分析し、農地転用が起きやすい地域を可視化しました【図4】。赤くなっている地域ほど、農地転用が起こりやすい地域であることを示しています。豊田市南部の若林駅周辺や保見駅や貝津駅周辺の市街化区域縁辺部が農地転用推定値が高くなっており、【図1】の土地利用メッシュ図の変遷と同じような傾向が読み取れ、これらの地域では特に郊外開発が進行することが懸念されます。おわりに 郊外地域を新規開発することは、生活利便性が向上する市民もいる一方、農地の減少や中心市街地の空洞化に拍車をかけることになります。今後、郊外の農地転用について、どの程度まで許容するのかを改めて考え直す時代になっているのかもしれません。 また、今回は研究の一部についてご報告しましたが、2021年2月17日開催予定の第109回まちべんでは、より具体的にご報告いたしますので、よろしければご参加くださいませ。謝辞 本研究は豊田市農業委員会より農地転用データをご提供いただき、佐藤雄哉准教授(豊田工業高等専門学校)との共同研究により実施しました。厚く御礼申し上げます。研究部研究員 坪井 志朗農地転用動向から見る豊田市郊外部の開発要因分析の報告

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