まちと交通 2020年11月 73号
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公益財団法人 豊田都市交通研究所2020年11月73号豊田市におけるコロナ禍の都市交通への影響特集 ゾーン30は、全国で整備が進められており(令和元年度末で3,864箇所)、筆者が生活する地域や出張・旅行で訪れた街においても頻繁に見かけるようになった。なぜ、こんなにも全国的な整備が進んだのか。大きな理由の一つとして、住民の意見や財政的制約を踏まえ、実現可能なものから対策を実施していくというコンセプトが挙げられる。ゾーン30の必須条件は、最高速度30km/hの区域規制であり、例えばハンプや狭さく等の設置は地域住民や道路管理者等との協議で設置するか否かを決定できる。 ゾーン30整備地区の対策内容であるが、警察庁交通局が取りまとめた平成28年度末時点でのデータ1)によると、ゾーン入口の路面標示やカラー化等のゾーン30をドライバーに認識させるための対策実施率は86.3%と多くの地区で実施されている。その一方で、ハンプや狭さく、スラローム・クランク等の物理的デバイスの設置は4.2%と非常に低い実施率である。この原因としては、ゾーン30内の住民にとっても自動車を運転しにくくなることや、ハンプの振動・騒音(近年の研究の蓄積により、実際は大きく改善されている)等への不安から、住民の同意が得られにくいためだと考えられる。しかし、交通事故削減の観点からは、自動車走行速度の低減効果の高い物理的デバイスの設置は積極的に導入すべきと言える。実際に、筆者は研究の一環として複数のゾーン30において自動車走行速度を計測している。その結果、ハンプやクランク等の物理的デバイスが設置された路線では、平均自動車走行速度が30km/h以下に抑えられている一方、物理的デバイス未設置路線では30km/hを超過している傾向にあることを確認している。全国的に整備が進んでいるゾーン30ではあるが、自動車走行速度の低減効果は対策内容によって異なっている。 このような現実から、効果的な生活道路の交通安全対策とはどのようなものであるか、そして、それを確実に実現するためにはどうすべきか、改めてしっかりと検討すべき時期に来ていると言えよう。 これまで、我が国の生活道路の交通安全対策は歩車分離、歩車共存、シェアード・スペース等、様々な考え方に基づいて試行錯誤を重ねてきた。私自身も柔軟な発想を心がけ、生活道路の交通安全対策のこれからについて探求し続けていきたい。1)警察庁交通局(2017)、「「ゾーン30」の推進状況について」コロナ禍での研究成果報告会(2020/7/7開催)お知らせ<今後の予定> ●日時:12月16日(水)、2021年1月20日(水)、2月17日(水)    いずれも18:00~19:00●会場:豊田都市交通研究所(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中 (https://www.ttri.or.jp/machiben/)「まちべん」に参加しませんか 生活道路の交通安全対策豊田工業高等専門学校 環境都市工学科 教授山岡 俊一

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