まちと交通 2020年8月 72号
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図1/Wi-Fiパケットセンサーで収集したデータの   流れのイメージ図2/WPSの設置位置(2020年6月末時点)新型コロナウィルス感染拡大が 豊田市都心の人出に与えた影響 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活に様々な変化をもたらしました。そのひとつに、外出自粛があります。学校の休校措置や企業のテレワーク導入、店舗の営業自粛、イベントの中止などは、人々の外出自粛を後押ししました。その結果、まちなかや繁華街の人出は大きく減りました。豊田市の都心も例外ではありません。 当研究所では、一昨年から豊田市都心における人々の活動に着目した研究に取り組んでいます。豊田市都心における人々の活動を把握するため、既存の様々なデータを活用した分析を行ってきました。2019年には、後述するWi-Fiパケットセンサーを設置してデータを収集しています。 ここでは、既存データや私たちが独自に収集したデータを用いて、新型コロナウイルス感染拡大が豊田市都心の人出に与えた影響を分析した結果を紹介します。 まず、Wi-Fiパケットセンサー(以下、WPSとします)について紹介します。WPSは、皆さんがお持ちのスマートフォンやタブレットなどの端末が、Wi-Fiと接続するために発信している電波を受信するものです。WPSから得た端末情報(個人情報保護に配慮して匿名化)、受信時刻、受信場所(センサー情報)などを、携帯電話回線を通じてサーバに蓄積し、分析可能な形にデータベース化しています【図1】。調査にあたっては、山梨大学の豊木教授のチームが開発したシステムを使用しています。 なお、Wi-Fiと接続する端末を持っていない人がいること、端末を持っていてもWi-FiをOにしている場合があること等により、全ての人を検知するものではありません。また、歩行者に限らず、自動車やバスを利用する人が持つ端末も検知します。これらのことに留意が必要です。 ラグビーワールドカップ2019の試合開催に合わせ、2019年9月に豊田市都心の20箇所にWPSを設置しました。2020年6月末時点では18箇所で運用しています【図2】。 ここでは、以前から都心で収集されているデータやWPSで得たデータ等を用いて、豊田市都心における新型コロナウイルス感染拡大の影響を概観します。ここで使用するデータの概要を【表1】に示します。これらのデータを用いて、2020年1月から6月における変化をみます。参考に、同期間に起こった新型コロナウイルス感染拡大に関係する主な出来事を【表2】に示します。表に示した①から⑤は後半の分析で参照します。 ここでは季節変動の影響を除くため前年同月との比較を行います【図3】。WPSは前年には未設置のため除きます。歩行者数や駐車場利用台数は2月から値が小さくなり始め、3月にはバス利用者の値も前年比2割以上小さくなっています。政府や愛知県独自の緊急事態宣言が出ていた4月や5月には前年比で半分以下に減少しています。緊急事態宣言解除後の6月は6~8割程度まで回復しています。今後も回復し続けるのか、あるいは横ばいで推移するのか、今後の動向を注視する必要があります。 豊田市都心で取得されているデータを研究部主席研究員 西堀 泰英/主席研究員 加藤 秀樹特集各種データから見る都心の状況人工知能による豊田市都心の人出の特徴抽出Wi-Fiパケットセンサーの概要はじめに

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