まちと交通 2020年8月 72号
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公益財団法人 豊田都市交通研究所2020年8月72号新型コロナウイルス感染拡大が豊田市都心の人出に与えた影響特集 2020年上半期はコロナ禍により、世界中がさまざまな影響を受けている。緊急事態宣言以降の厳しい時期を経て、都市交通について改めて多くのことを学んだ。 第一に活動の選択肢の多様化である。遠隔教育、在宅勤務、オンライン診療の実践が一気に加速した。とりわけ対面コミュニケーション経験がある間柄でのオンライン実践は多くの効果を生み、同時にオンラインの限界も学べた。通勤や通学あるいは通院を必須の移動と決めつけ、通勤通学ピーク時需要は不変と思っていたが、そうではないかもしれない。 第二に移動方法の多様化である。移動の頻度、距離、時刻が多様になり、感染予防のためのアドバイスもあり、結果的に移動方法が多様化してきている。混んでいる公共交通を避け、徒歩や自転車の活用例も増えた。小型の車両に低密度で乗車する選択肢も増えてきた。 第三に公共交通の危機と打開である。従来独立採算で運営してきた多くの公共交通システムは経営上の大打撃を受けている。ステイホーム策でピーク需要がかなり消滅し、ピーク需要にあわせた施設設計とサービス設計によるシステムをピーク需要で賄うビジネスでは成り立たなくなってきた。現状打破が緊急に求められており、例えばあらゆる時間帯での積極的かつ安全な利用の推奨による収入確保が必要である。長期的には、ピーク時前提の経営およびシステム設計ではないモデルへの転換が一案かもしれない。ピーク時需要が小さければ、車両も施設も乗務員も、より効率的な設計や管理ができる。着席数の多い車両や駅施設の普及も期待できる。 第四に道路空間の再構成の機会である。短距離移動が増え、感染防止の観点から徒歩や自転車が増えたことを受け、欧州のいくつもの都市で、道路空間の再配分事例が増え、徒歩や自転車中心の都市内街路が増加している。 これら、学んだことを巧みに組み合わせ、従来から主張されていた徒歩や自転車の推進、ピーク時緩和を一気に実現し、公共交通も新しいかたちでより効果的かつ効率的な運営をめざし、最終的に環境・社会・経済の各面で持続可能で、人々が健康に暮らせるまちづくりをめざす方向に収斂させていくよう、我々はまだまだ精進せねばならない。ホームやバス停に人が戻ってきた平日朝の豊田市駅(2020年7月初旬に撮影、西堀)お知らせ<今後の予定> ●日時:8月19日(水)、9月16日(水)、10月21日(水) いずれも18:00~19:00●会場:豊田都市交通研究所(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中 (https://www.ttri.or.jp/machiben/)「まちべん」に参加しませんか コロナ禍を乗り越える都市交通横浜国立大学 副学長・教授 中村 文彦

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