まちと交通 2019年8月 68号
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表2/車検の有効期間と代表的な車種図2/年間平均走行距離の算出式車検の有効期間(初回/2回目以降)代表的な車種1年/1年・営業用旅客車(バス・タクシー・ハイヤー)・(営業用・レンタカー・自家用)貨物車(車両総重量8t以上)3年/2年・自家用乗用車(普通・小型・軽)・自家用二輪車(小型)2年/1年・(営業用・レンタカー・自家用)貨物車(車両総重量8t未満、軽を除く)2年/2年・(営業用・レンタカー・自家用)軽貨物車AATDj・TVIj・Nsample,j=∑k1・∑k2{(P_ODOnew,j,k1-P_ODOold,j,k2)・N_ODOj,k1,k2} (1)Nsample,j=∑k1・∑k2(N_ODOj,k1,k2)………………………………………………………………………(2)ただし、以下の①~③の3つの条件のいずれかに該当するときは、式(3)を適用します。①(P_ODOnew,j,k1-P_ODOold,j,k2)<0のとき②k1=0のとき③k2=0、かつ、3回目以降の車検を受けていると考えられる初度登録年月のとき(P_ODOnew,j,k1-P_ODO_old,j,k2)=N_ODOj,k1,k2=0……………………………(3)す。本研究で提案した新たな自動車走行距離推計手法は、基本的にこのような考え方に基づいています。 【図1】の記載例では、1.95年間(平成28年11月16日~平成30年10月26日)で走行距離16,000km(36,500km~52,500km)なので、年間平均走行距離は約8,200kmとなります。 車検証に記載された走行距離計表示値等の情報が得られる統計資料として、一般財団法人自動車検査登録情報協会が有償で提供する「個別統計データ」があります。個別統計データでは、車検証の記載事項等を指定条件として、該当する自動車の保有台数の集計値を得ることができます。 車検証に記載のない「年間平均走行距離」を集計の条件に指定することはできませんが、走行距離計表示値と旧走行距離計表示値の両方を条件に指定することができ、例えば、両方を1,000km刻みと指定すれば、【表1】に示すような表示値の範囲を階級として、階級に該当する保有台数(表中の「X,XXX台」の部分)が個別統計データから得られます。また、旧走行距離計表示値と走行距離計表示値の代表値の差から走行距離を求めることができます(【図1】の表示値の例を表中に赤字で表示)。なお、一般的には、走行距離計表示値が旧走行距離計表示値より小さい(表中の薄い黒文字の部分)ということは起こらないはずですが、オドメーターが1回転してゼロに戻ったり、表示値の転記ミスがあったり、メーターが故障して交換したりといった理由で、そのようなデータも少ない割合ですが存在しています。 一方で、個別統計データには、「走行距離計表示値の計測日」に関するデータがなく、集計の条件に指定することができないという制約もあります。そこで、本研究では、各車両は車検の有効期間を満了して車検を受けたと仮定して、走行期間を設定しました。なお、車検の有効期間は、【表2】に示すように、用途(運送事業用、レンタカー、自家用)と車種に応じて決められており、4パターンに集約することができます。個別統計データでは、初度登録年月、自動車の種別(小型乗用車等)、自家用・事業用の別等を、データ抽出や集計の条件として指定可能なので、どのパターンに該当するデータなのか知ることができます。 個別統計データと車検の有効期間から、求めたい車種の年間平均走行距離を算出する方法は、多少、複雑になります。前述のように、車両の用途や車種によって車検の有効期間が異なるため、少なくとも車検期間が同じ車両ごとに分類して、個別統計データを集計する必要があります。分類した車種グループ名をjとしたとき、jの年間平均走行距離AATDj(Annual Average Travel Distance)について、【図2】に示す式を用いて算出する手法を本研究の成果として提案しました。なお、TVIj(Termof VehicleInspection)は車検の有効期間、Nsample,jは個別統計データで得られた全保有台数(異常値データを除く)です。 ここで、k1とk2は、それぞれ、走行距離計表示値と旧走行距離計表示値の階級です。P_ODOnew,j,k1とP_ODOold,j,k2は、それぞれ、走行距離計表示値の階級k1と旧走行距離計表示値の階級k2における代表値(km)です。N_ODOj,k1,k2は、走行距離計指示値の階級がk1で、かつ、旧走行距離計指示値の階級がk2に該当する車両台数(台)であり、個別統計データから得られる値です。 また、次の条件のどれか1つにでも該当する場合は、異常値やデータの不備と考えられるため、サンプルから除外することとしています。①走行距離計表示値が旧走行距離計表示値よりも小さいとき②走行距離計表示値が記載されていないとき③3回目以降の車検を受けているにもかかわらず旧走行距離計表示値が記載されていないとき 提案手法によって得られる年間平均走行距離がどのくらい正確であるのかを検証するため、走行距離データが得られる唯一の全数調査である自動車輸送統計調査の全数バス調査の結果と提案手法の結果を比較しました。全数バス調査は営業用バスを対象とした調査で、2016年4月~2018年3月の2年間の年間平均走行距離は41,460kmでした。これに対して、本研究の提案手法を用いて得られた営業用バスの年間平均走行距離は、41,683 kmとなりました。その差は約0.54%で、全数バス調査とほぼ同じ値が得られることが確認できました。また、サンプル率が90.3%と高いことか使用するデータ年間平均走行距離の算出式提案手法の検証

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