公益財団法人 豊田都市交通研究所2019年8月68号車検証データに基づく詳細な自動車走行距離推計手法の提案特集 2018年10月、JAFは「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査2018年」の結果を公表した。これは、各都道府県内2箇所ずつの信号の無い横断歩道(以下、無信号横断歩道)を対象に、JAF職員自らが歩行者として当該横断歩道を横断しようとする際の自動車の一時停止率を調べたものである。JAFのホームページ1)では都道府県別の調査結果が公表され、一時停止率が58.6%(長野県)~0.9%(栃木県)と大きく差があったことが示されている。 実は筆者も2012年に、秋田市内および豊橋市内の無信号横断歩道を対象に、同様の手法の調査を学生2名とともに実施したことがある。結果は秋田市内の自動車停止率が1%未満、豊橋市内が24%程度であった2)。先述のJAFの調査結果では、秋田県が7.6%、愛知県が22.6%となっており、愛知県の方が一時停止率が高いという類似の傾向が示されている。 さて、本稿でお話ししたいのはこの調査結果自体ではなく、本調査を実施した際の学生の反応から感じたことである。先に秋田市内で調査をした際、筆者が「なぜこれほど止まってくれないのか!?」と驚いたのと対照的に、学生は「こんなものですよ」といささか冷めた反応であった。一方、豊橋市内での調査で学生は「めっちゃ止まってくれる!!感動しました!!!」と興奮気味に語っていた。この学生は2名とも秋田市出身であった。筆者がこのやり取りから想起したことは、一時停止率が低い地域で育った子供は経験上それが普通となり、またその子供たちが大人になり一時停止率の低い地域を形成してしまうという悪循環があるのではないかという仮説である。そしてそれはもちろん横断歩道での一時不停止問題に留まらず、様々な交通ルールやマナーにも当てはまるだろうということである。例えば、近年、小・中学校では自転車の左側通行などの交通ルールの教育に尽力されている。しかしいくら学校で教わっても、地域の大人が交通ルールを守っていない状況を見た子供たちは、「学校で習う交通ルールは形式的なもので別に守らなくても特に問題ない」と感じてしまうだろう。一方近年、警察は横断歩行者妨害違反の取締りを強め、豊田市の歩行者保護モデルカー活動など地域が積極的に意識改革に動いているところも増えてきた。これらにより交通ルールやマナーが地域で自然と良い方向へ教育される好循環が、各地で生まれてくることを期待するところである。 最後に、上述した仮説はまだ「仮説」であり、研究者としてしっかりと検証を進めることで、より良い地域交通社会の形成に貢献していく所存である。1)URL:http://www.jaf.or.jp/eco-safety/ safety/crosswalk/index.htm2)松尾幸二郎、廣畠康裕、佐藤修生、山内洋佑:無信号横断歩道におけるドライバーの「譲り」に関する基礎的調査および考察,第33回交通工学研究発表会論文集,225‒228,2013.さまざまな走行距離計(オドメーター) 撮影:加藤お知らせ<今後の予定> ●日時:8月21日(水)、9月18日(水)、10月16日(水) いずれも18:00~19:00●会場:豊田都市交通研究所(豊田市元城町3-17元城庁舎西棟4F)※詳細はWEBに掲載中 (https://www.ttri.or.jp/machiben/)「まちべん」に参加しませんか 地域による交通ルールの教育豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 助教松尾 幸二郎
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