図1/公共交通による移動時間の分布と主要拠点図2/公共交通と自家用車の移動時間の差研究所活動報告■本研究の背景と目的 近年、人口の急激な減少と高齢化を背景として、環境負荷、財政問題に対応しながら住民が公共交通により生活利便施設等にアクセスできる都市構造が求められております。第8次豊田市総合計画においては、市民の安全・安心、快適な生活を支えるため、多核ネットワーク型の都市構造を目指しており、都市機能の集約、交通手段の確保などの政策を推進しています。 その中で、住民が買い物施設、医療機関などの日常生活を支えている様々な施設へ、どの程度アクセスしやすいか(アクセシビリティ)は、将来の都市構造を考える際に最も重要な要素の一つであると考えられます。近年の施設の集約とネットワークによる連結を考えると単純に個別施設だけはなく、様々な種類の施設を同時に考えていく必要があります。 そこで本研究では、豊田市民の日常生活におけるアクセシビリティを評価し、現在の施設の配置やネットワークにおける課題と改善方策を明らかにすることを目的としております。本稿では、その研究内容の一部を紹介いたします。■日常生活における必要な施設の選定 2015年の内閣府による国土形成計画の推進に関する世論調査では、病院、金融機関(郵便局を含む)、スーパーマーケットが徒歩・自転車で行ける範囲に必要な施設の上位3種類となっています。本研究では、これらの施設を個別に訪問することではなく、巡回する際の移動時間を用いてアクセシビリティを評価しております。■車利用者と車非利用者のアクセシ ビリティの比較 アクセシビリティの評価において、利用可能な交通手段は重要な要素です。第3次豊田市住宅マスタープランによると、運転できなくなった時の移動について不安を感じる高齢者の割合が非常に高いです(調査対象の65歳~74歳の約54%)。そこで、本研究では、車が利用できる時の移動時間と車が利用できない時の移動時間の比較を行っております。【図1】と【図2】は、それぞれ自宅から公共交通を利用する際の移動時間、公共交通と自家用車の移動時間の差を表しております。その結果から見ると、市民の約20%が公共交通で30分以内に3つの施設を利用することが可能であり、施設が少ない山村部を中心に約5%の市民が2時間以上の移動が必要であることが分かります。市街地においても公共交通による移動が自家用車に比べて不便になる地域があることが見られます。これらの分析により、市民の移動における課題を明確にしております。■おわりに 上記の分析結果を踏まえ、市民のアクセシビリティを向上させるために必要な対策の提案を進めております。本研究に当たり、豊田市都市計画課及び定住促進課から貴重な意見を頂き、この場を借りて感謝申し上げます。 今後も当研究所では、豊田市をはじめ、各地のより持続可能であり、暮らしやすい都市構造と公共交通の実現にむけた取り組みを進めて行きます。研究部研究員 嚴先鏞日常生活におけるアクセシビリティに 基づいた都市構造の評価に関する研究
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